各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書
視察報告書
- 委員会名・会派名
- 総務委員会
- 視察先
- 愛知県 長久手市
- 視察案件
- 市民主体のまちづくりについて
- 実施日
- 令和6年10月24日
- 参加者氏名
- 山口 剛一、藤原 智子、酒谷 和秀、阿部 雅一、山崎 進、荒木 洋美
視察結果概要
(1)視察先の概要
長久手市は、名古屋市の東側に位置し、人口は61,077人(令和6年4月1日現在)、面積は21.55㎢です。市の中央部を東部丘陵線(リニモ)が走っており、西は地下鉄藤が丘駅、東は愛知環状鉄道八草駅と乗り換えもできます。車でのアクセスも東名高速道路名古屋インターチェンジや、名古屋瀬戸道路長久手インターチェンジが近く、交通の便に恵まれています。
天正12年に徳川・豊臣両氏が相まみえた激戦の地(小牧・長久手の戦い)として名を知られ、平成24年1月に市制を施行して現在の長久手市となりました。
名古屋に隣接した市西部は住宅地・商業施設などが多く、都市化が進んでいます。また、市東部は今なお自然を多く残しており、市街化された都市と自然豊かな田園の両面を併せ持っています。
(2)視察内容
○取り組み開始の経緯について
将来の人口減少・少子高齢化の到来や大災害に備え、急激な人口増加や価値観の多様化等により、希薄となった人と人のつながりを取り戻すため、「長久手市みんなでつくるまち条例」が制定され、市民主体のまちづくり(まちづくり協議会など)が推進されることとなりました。
○取り組みの概要について (概要、特色など)
市全体を画一的に捉えるのではなく、小学校区を単位に、「地域の課題は地域で解決する」文化を根付かせるため、そのための組織となる「まちづくり協議会」の設立や小学校区単位のまちづくりの拠点となる「共生ステーション」の設置が進められています。
○取り組みの経費・財源について (導入及び維持の経費・財源など)
まちづくり協議会については、設立準備会に約50万円、協議会が立ち上がると約400万円の交付金を支出しています(一般財源)。
共生ステーションは、設立に向けたワークショップ等を経て建設されます(一般財源)。維持管理に係る費用(スタッフ人件費、光熱水費等)についても、市が支出しています(一般財源)。
○取り組み実施による効果について
防災や防犯、こどもの居場所づくりなど、地域で抱える課題を自分たちで解決する動きが広がってきています。そうした活動を市民同士が協力して実施することにより、つながりが生まれたり、次世代のまちづくりを担う若い世代の参加も増えてきています。また、共生ステーションでは、市民の困りごとを地域でキャッチしています。
○今後の課題などについて
◇まちづくり協議会
・残りの校区での「まちづくり協議会」の立ち上げ(3小校区が未立ち上げ)
・新規のまちづくり協議会の立ち上げに伴う交付金の額の増額
・まちづくり協議会の認知度をどう上げていくか
・役員のなり手や一部の役員への負担感、役員が民主的に選ばれる仕組みづくりなどの体制について
・他の活動団体との対等な関係性づくり
◇共生ステーション
・今後の管理や運営方法について
・会議室の利用方法、営利・非営利をどのように見極めるか
・ステーション同士のネットワークづくり
・団体同士の交流の促進
・スタッフの育成
(3)視察から得られた考察
@小学校区単位のまちづくりの意義と可能性
長久手市の取り組みでは、小学校区を単位とした「まち協議づくり会」と「共生ステーション」の設置が進められ、地域の課題を地域で解決する仕組みが強化されています。市民主体の活動が進むだけでなく、地域ごとの特色を考慮した柔軟な課題解決が可能となっています。
本市でも、小学校区や町内会単位で地域特有の課題に取り組む組織を設立し、市全体では具体的な課題の解決を推進する仕組みづくりが有効だと考えます。つながりを深める場として、類似の拠点施設を設置することは大きな効果を生むでしょう。
A市民主体の活動を継続する支援の重要性
長久手市では、まちづくり協議会の設立準備から運営に至るまで、市が交付金を支出し、一時支援を行っています。また、共生ステーションの維持管理費も一般財源から支出され、市民活動が安定的に運営されています。このような支援により、市民が自発的かつ安心して活動に取り組む環境が整っています。
本市でも、市民主体のまちづくり活動を促進するために、一時支援の費用負担を検討する必要があると考えます。特に、新しい枠組みでの活動の初期段階で、支援を集中させることは、地域の組織づくりや活動基盤の確立をスムーズに進められると考えられます。
B次世代の見通しづくりとネットワーク構築の必要性
長久手市では、市民の協力活動に若い世代の参加が増えている点が特徴です。共生ステーションや協議会は世代間交流の場としても機能しており、地域課題を捉え、解決に主導的な役割を果たしています。役員負担や次世代の育成、異なる協議会同士のネットワークづくりの課題が見られます。
本市で検討する場合は、次世代の参加を増やすために、若者向けの活動プログラムや負担軽減の仕組みを大切にすることが重要です。また、地域団体同士のネットワークを強化し、連携を深めることで、地域全体のつながりを強固にすることが期待できます。
市民主体のまちづくりを進める上で、長久手市の取り組みは大いに参考にすべき事例だと考えます。

視察の様子