本文へ移動
背景色

現在位置 :トップページ › 行政視察報告書

各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
自民・無所属の会
視察先
大分県 日田市
視察案件
日田市の観光事業の展開について(進撃の巨人とのまちおこし)
実施日
令和6年1月24日
参加者氏名
山崎 進、鬼丸 裕史、金子 進、水沼 日出夫、
石川 友和、山口 剛一、永田 飛鳳、会田 吉幸

視察結果概要

(1)視察先の概要
 日田市は北部九州のほぼ中心部、大分県の西部に位置し、福岡県と熊本県に隣接した地域です。市の中心部を流れる筑後川の上流である三隈川を始め、花月川、大山川、玖珠川などの河川が合流する「水郷(すいきょう)」のまちです。市の総面積は666.03kuで、大分県で2番目に広く、総面積の約80%を山林原野が占めており、日田杉で知られる日本でも有数の木材産地です。気候は寒暖の差が大きく、四季の移ろいがはっきりしているのが特徴です。
 古くから北部九州の各地を結ぶ交通の要衡の地として栄え、江戸時代には幕府直轄地「天領」として、西国筋郡代が置かれ、九州に政治・経済・文化の中心地として繁栄してきました。平成17年3月22日に2町3村(前津江村・中津江村・上津江村・大山町・天瀬町)を編入合併し現在の市域となっており、人口は令和5年3月末現在で、61,494人で27,477世帯です。
 「天領ひた」「水郷ひた」さらに「九州の小京都」と呼ばれ、江戸期から昭和初期にかけての伝統的建造物が残る街並みや、文化財指定の歴史的建造物、日本遺産、温泉街など多くの観光スポットを有しており、夏にはユネスコ無形文化遺産に登録された勇壮な祇園祭「日田祇園の曳山行事」も行われます。
 TDK株式会社、化学物質評価研究機構、SWS西日本株式会社の立地のほか、九州横断自動車道の開通により株式会社九州コクボ、サッポロビール株式会社、三和酒類株式会社の進出など、企業誘致も積極的に行われており、ビールや焼酎の製造工程の見学など観光工場も日田の観光にはずみをつけています。

(2)視察内容
 『進撃の巨人 in HITA〜進撃の日田〜プロジェクト』は全世界シリーズ累計1億部を突破した大人気漫画『進撃の巨人』の原作者である日田市出身の諫山創氏の「自分が『進撃の巨人』を作るに至ったこの町に何か恩返しができないものか」という想いと共に、市民有志によって動きだしたプロジェクトです。
 市民有志とは、『進撃の巨人』の熱狂的なファンである市民が仲間同士で地域振興を目的に【進撃の日田まちおこし会議】を立ち上げ、行政のサポートを受けながら、自治会長等、地域コミュニティを引き込みながら組織化していきました。
 2019年に【進撃の日田まちおこし会議】は、進撃の巨人の銅像設置のクラウドファンディングを行いたいという企画を講談社へ直接相談。講談社の回答では、銅像制作は問題ないが、市が関与してほしい。との返事を受け、【進撃の日田町おこし会議】が市長へ報告し、そこから正式に市のまちづくり推進課が団体を支援する立場で関与をしていくことが決定されました。
 その後、講談社も協力のもと、クラウドファンディングを2019年8月7日〜10月16日の期間で実施、さらに11月20日からはふるさと納税を1月31日まで行い、ふるさと納税では1772.9万円の支援を受けました。その中で市内企業である【株式会社T&Sおおいた】から銅像プロジェクトを支援したいとの提案があり、以降、銅像除幕式の準備やHP更新、SNSなどを【株式会社T&Sおおいた】が中心となって動いていきました。
 2020年には、行政として、まちづくり推進課において、ふるさと納税を財源とし、
〇商品開発に関する著作権使用料の補助(10/10 上限10万円)、
〇「進撃の巨人」を活用した地域活性化に資する公的な事業(原作者出身高校の美術選択者による「進撃の巨人」作品展、キャラクタービジュアルシート、AR、のぼり旗、タペストリー作成等)への補助(8/10 上限350万円)という『「進撃の巨人」プロジェクト支援事業補助金』を開始。
 また、銅像までの案内看板の設置や、ガイドマップ、等身大パネルの作成の予算化など市民活動へのサポートも行いました。
 【株式会社T&S】ではスマホアプリゲーム「進撃の日田」の配信が開始され、大山ダムと日田駅前に銅像が設置され除幕式が行われました。
 2021年には、道の駅に「進撃の巨人in HITAミュージアム」がオープンし、それに伴い、様々なイベントや民間事業者の協力を得て多くのコラボグッズ発売や、ホテル宿泊プラン発表、期間限定アトラクション設置などが市内で繰り広げられました。
 2022年には、行政として、まちづくり推進課のみならず、観光課でも誘客促進事業として予算をつけて参加し、大分県の観光産業リバイバル推進事業として採択されました。
 アプリのスタンプラリー等のAR設置や、アプリ内にてクーポン機能が追加されたり、東京、名古屋で実施された「進撃の日田フェア」を観光課として実施しました。また、観光情報のサポートを行う「進撃の日田」コンシュルジュスポットを市内15か所へ設置し、日田市内に点在する「進撃の日田スポット」や「進撃の日田コラボグッズ取扱店」など「進撃の日田」関連情報の案内、チラシの配布、交通案内、日田グルメ・お土産などに関するおすすめ情報を提供できる体制づくりを行いました。コンシェルジュは、日田市の市民有志で行われており、コンシェルジュになるためには、
1回目 進撃の日田の経緯とこれから(講師:日田市役所職員)
2回目 日田市の観光について(講師:日田市観光協会)
3回目 進撃の日田コラボグッズの勉強会(講師:各事業者)
4回目 コンテンツツーリズムのおもてなしについて(講師:キャラクタービジネスや町おこしの経験がある方)
という研修を行えば誰でもなれるというものです。
 また、【株式会社T&Sおおいた】では、進撃の日田オフィシャルバスツアーがスタートされ、「進撃の日田カフェ」などもオープンしました。その後、「進撃の日田」が講談社メディアアワードを受賞し、「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」にミュージアムが認定をされました。
2023年には、観光庁がインバウンドの本格的な回復をさせることを目的に行っている「観光再始動事業」に採択され、総額7750万円の予算がおり、ミュージアムでの「米仏イベント凱旋企画展示」がスタートされ、ミュージアムの有料化を開始しました。来館25万人達成記念イベントなども実施され、また、既存の空いている施設を活用し、別館となる進撃の巨人 in HITAミュージアムANNEXが開館。進撃の巨人ゆかりの地を巡るシャトルバスの運行も開始されました。TVアニメ『進撃の巨人』放映10周年イベントでは、原作者である諫山先生、声優の梶裕貴さんも参加され各ミュージアムでの夜間営業も行われました。また、飲食店によるコラボナイト営業も実施されているところです。
 そして現在、行政での事業としては、観光課で「進撃の巨人」を活用した誘客促進事業の中で、観光宣伝委託料として・進撃の日田イベント関連制作・ガイドマップ作や・進撃の日田フェア会場使用料・著作権使用料(日田市契約分)を担当し、商工労政課で「進撃の巨人」プロジェクト支援事業として、これまで同様「進撃の巨人」を活用した商品開発に関する補助をどちらも一般財源で行っています。
現在の課題としては、進撃の巨人の主要スポット各所が離れていて、バスが運行しているものの、利便性がまだまだである、地元のバス会社との協議やレンタサイクルの導入など今後改善を図っていく予定とのことです。

(3)視察から得られた考察
 日田市の観光は、もともと多くの観光資源を有しているにも関わらず、新たな観光資源として、インバウンドにも効果的である世界的に有名な「進撃の巨人」を発掘し、行政、民間企業、市民、その他団体を巻き込みながら大きなプロジェクトに発展させているものでありました。プロジェクトを成功に導いたのは「進撃の巨人」という漫画・アニメの魅力だけではなく、アニメファンという熱意のある市民の方をの働きかけがきっかけに始まり、地域おこし協力隊(NPO支援担当、日田産品振興、観光誘客担当)や【T&Sおおいた】という企業からの支援、地元の中小企業によるコラボ商品開発、そして講談社の協力と原作者である諫山先生の協力、それぞれの得意分野を活かしながら、自分たちはどこまでどのようなことが行えるのか、実現していくにはどうするのか。という関係各所、様々な団体、個人が関わることによって波及効果が産まれた事業でありました。
 また、市民と民間のみならず、行政としても、できうる範囲での、あくまで民間のサポートという立場で参加することによって、なんでもかんでも行政にお任せというような市民の方たちの意識ではなく、官民連携の理想的な形として組織運営がなされていると感じました。もちろん、進撃の日田まちおこし会議が組織される以前は、日田市行政のほうにも市民の方から「進撃の巨人で何か町おこしをやってくれ」というような声が多く届いていたようですが、行政でやれる範囲というのは、かなり限られてしまうということを再認識しました。本市にも同じように、インバウンド効果も期待できる『クレヨンしんちゃん』という観光資源がありますが、今の現状では、日田市の初期の頃と同様に、行政で何かクレヨンしんちゃんをもっと活用してくれという声が多くでている状況であり、せっかくの『クレヨンしんちゃん』を活用しきれていないのが現状であります。日田市の『進撃の巨人in HITA〜進撃の日田〜プロジェクト』の運営体制は現在、進撃の日田まちおこし協議会として、・進撃の日田まちおこし会議・T&Sおおいた(事務局)・コラボ事業者協働団体が中心となり、・日田市観光課・大分県西部振興局・日田市観光協会・ツーリズムおおいた・おおやま夢工房がオブザーバーとして月1回の定例会議を開催されております。その中でもT&Sおおいたと日田市の観光課が講談社とやりとりをしており、最初のきっかけとしては市民有志が直接講談社へ企画を持って行ったとのことでしたが、市民が直接というのはなかなかハードルが高いように感じます。であるならば、本市としても市民の方からの熱量を期待をしたいところではありますが、行政としてできる範囲で『クレヨンしんちゃん』の出版社である双葉社などと市民の方、そして『クレヨンしんちゃん』を活用したい地元企業の橋渡し役として、よりよい関係性を築いていく必要があると考えます。
 その中でも、日田市で行われているコラボグッズ商品開発に関する著作権使用料の一部補助などの取り組みはアニメコンテンツを使用する上で一番ネックな版権問題が解消され、機運も醸成されることから効果的ではないかと思います。また、クラウドファンディングの活用やふるさと納税を財源とすることにより、春日部=クレヨンしんちゃんという更なるPRや、諫山先生のようにふるさとに恩返ししたい。と想う市民の参加も期待されると考えます。日田市は実際に銅像のクラウドファンディングは目標1400万が開始1時間で達成、そしてふるさと納税では、選べる使い道として市長にお任せを選ぶと進撃の巨人を使ったまちおこしに使うことができ、特典としてお礼状を諫山先生の描き下ろしデザインの杉ファイルにいれて発送していたということです。本市のクレヨンしんちゃんもポテンシャルは充分に秘めている作品であると考えます。しかし、クラウドファンディングやふるさと納税で財源を集めるためには、現在本市で取り組まれているシビックプライドの醸成のための政策も重要です。原作者の諫山先生のみならず、現在プロジェクトの事務局として参加されているT&Sおおいたの社長さんも、デジタルコンテンツの会社で本社は渋谷に構えているとのことですが、地元へ貢献したいということで日田へIT会社を建てたいということで企業誘致されたということです。
 本市では、令和3年4月1日から春日部の観光をこれまで以上に力強く推進していくため、観光協会が一般社団法人化されております。今まで以上に自主性をもった事業展開が可能となったわけですから、本市の魅力の一つである、クレヨンしんちゃんを観光にも積極的に活用できるように、日田市を参考に官民連携、そして市民の人たちも日田コンシェルジュのように気軽に参加できる施策を市を挙げて推進していき、本市の観光業を今後アフターコロナのインバウンドを見据えながら盛り上げる必要があると強く感じました。

視察の様子
Copyright(c) 2007- 春日部市議会公式サイト Kasukabe City Council. All Rights Reserved.