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各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
次世代 かすかべ!
視察先
北海道 登別市
視察案件
登別市生きることを支えあう自殺対策条例について
実施日
令和5年10月11日
参加者氏名
小久保 博史、河井 美久、吉田 稔、
伊藤 一洋、阿部 雅一、奥沢 裕介

視察結果概要

(1)視察先の概要
面積 212.21㎢、総人口 44,564人 、世帯数 24,031世帯(令和5年9月末日現在)
人口密度 210人/㎢
隣接自治体:室蘭市、伊達市、有珠郡壮瞥町、白老郡白老町
市の木:プラタナス、市の花:キク、市の花木:ツツジ

 北海道中南部(道央地方)に位置し、北海道有数の温泉地である。登別温泉は江戸時代から知られており、最上徳内著の『蝦夷草紙』にも記されている。市東部の登別温泉・カルルス温泉がある地域は支笏洞爺国立公園となっており、「観光都市」としての色合が強い。丘陵地では酪農も行っている。一方、市中西部は室蘭市からの市街地が続いており、「工業都市」の一翼を担っている。
 市名の由来は、アイヌ語の「ヌプㇽ・ペッ」(ラテン文字表記:nupur-pet色の濃い川)。これは石灰質の温泉が川に流れ込んで川の色が白く濁っていることによるもの。

(2)視察内容
1.本条例の制定に至った経緯
 平成21年、国による地域自殺対策緊急強化事業基金の創設に伴い、地域自殺対策強化交付金が交付されたのを皮切りとして、平成28年、自殺対策基本計画の策定が義務化されるなど、自殺が全国的に社会的課題として認識される動きが広まった。
 そのような社会動向に伴い、自殺予防普及啓発パンフレット及びクリアファイルの作成・配布、地方紙への自殺予防広告の掲載、自殺予防パネル展の実施、保健所・病院との共催による自殺予防ゲートキーパー研修会の開催などの取り組みを行う中、登別市では社会福祉士が初めて採用されたことや、本条例の制定に向けて1人で先鞭を切った登別市議会議員、辻󠄀弘之氏(現議長)も社会福祉士であったこと、登別市における自殺率が北海道内の平均より高かったことなどをきっかけとして、平成25年、「のぼりべつ生活支援者勉強会」が若手有志により立ち上げられた。メンバーは行政職員・民間福祉職・民生委員・保育士・養護教諭などで構成され、勉強会や市民公開講座などを重ねていく中で熱量を持った人々が集まるようになり、国の職員や大学教授などの有識者の賛同も得ながら、平成29年7月に本条例制定に向けてワーキングクループが設立された。グループメンバーは、社会福祉協議会、社会福祉士会、医師、民生児童委員協議会、他会派議員、市職員などパブリックな団体が参画し、翌年の平成30年3月に本条例の制定となった。

2.本条例制定で期待される効果について
 自殺予防対策について、より長いスパンで考えることができ、自殺予防対策に対する認識を関係者の間で共有することができ、啓発に繋げられる。

3.現在の取り組み
 平成28年3月の法改正により、すべての市町村に「地域自殺対策計画」の策定が義務化されたことに伴い、保健、医療、福祉、警察、消防、教育、労働、産業、観光等の関係機関21団体で構成された登別市自殺予防対策連絡会と計画案を協議し、平成31年3月、登別市自殺対策行動計画が策定され、令和元年度〜5年度を計画期間として、関係機関との連携強化、市と関係機関の役割分担の明確化を図り、「生きることの包括的な支援」としての自殺対策を推進している。主な取り組みとして、“高校生活における楽しさ、生きづらさ”を大人と話し合うワークショップや、“多様性を認め合う人づくりフォーラム”などを継続的に開催するとともに、自殺多発地点を通行する事業者への自殺企図者発見時の通報協力依頼、消防職員の通勤途上及び業務移動中における見回り、防犯カメラ、赤色回転灯装着車、青色LEDライトを設置している。

(3)視察から得られた考察
 自殺を個人因子ではなく、社会的構造の欠陥から生じる社会的因子の課題として捉え、まち全体での永続的な対策が必要という考えのもと、その啓発の手段として本条例の制定に至った。政策としての優先順位は極めて低く、社会的にタブー視されている問題であるため、社会福祉士でもある1人の市議会議員が賛同者を増やしながら、社会福祉協議会、社会福祉士会、医師、民生児童委員協議会、他会派議員、市職員などパブリックな団体も巻き込んで条例制定に至った経緯を見ると、自殺の他にも、いじめ・不登校や児童虐待などの問題にもあてはまる貴重な実例であると感じた。

視察の様子
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