本文へ移動
背景色

現在位置 :トップページ › 行政視察報告書

各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
自民・無所属の会
視察先
埼玉県 上尾市
視察案件
政治倫理条例について
実施日
令和5年10月4日
参加者氏名
鬼丸 裕史、水沼 日出夫、石川 友和、
山口 剛一、会田 吉幸

視察結果概要

(1)視察先の概要
 上尾市は、埼玉県南東部、都心から約35km圏内に位置し、市域は東西10.48km、南北9.32kmで、面積は45.51kuです。地形は平坦な大宮台地にあることから起伏が少なく、東西の河川沿いには豊かな自然環境があり、市内の周辺部には武蔵野の面影を残す雑木林が見られます。人口は、国民体育大会の主会場となった昭和42年ごろから急増し、昭和45年の国勢調査では人口増加率102.3%と市としての全国一の伸び率を記録しました。
 令和5年4月1日現在の人口は埼玉県内で8番目の23万273人であり、都心へのアクセスの良さからベッドタウンとして人口が増加してきましたが、近年は大きな伸びは見られなくなっています。市内の鉄道駅は、JR高崎線の上尾駅、北上尾駅があるほか、市東部には埼玉新都市交通(ニューシャトル)の原市駅、沼南駅があり、また、道路環境としては、市内を貫通する国道17号上尾バイパス線(上尾道路)が開通し、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)へのアクセスが大幅に向上するなど、交通利便性の高い地域となっています。

(2)視察内容
 上尾市において令和2年10月に制定されました「上尾市長等政治倫理条例」及び「上尾市議会議員政治倫理条例」について、当該条例制定の背景及び経緯、制定目的並びに検討・調整を要した課題、条例施行後の運用状況等について理解を深めることを調査目的としています。
【制定背景及び経緯について】
 平成29年10月30日、上尾市西貝塚環境センターの業務に関する入札を巡り、当時の市長及び議長らが逮捕される事件が発生しました。
 政治倫理条例制定の経緯については、平成31年3月18日、再発防止の提言を行うために設置された外部の弁護士・税理士・行政書士・大学教授らで構成された第三者調査委員会から、@政治倫理基準の明示、A資産公開制度、B政治倫理審査会の設置、C市民の審査請求権、D市民の問責権を含む政治倫理条例制定の提言を受け、「市長や市議会議員等政治家が業者との不適切な関係を持たず、その清廉性及び透明性を確保するため政治倫理条例を制定することが不可欠」といった提言がなされたことから、政治倫理条例の制定を検討することとしました。
 議員政治倫理条例制定の経緯については、平成30年9月より、「政治倫理規定の策定・議員の品位について」協議を開始し、令和2年3月定例会において政治倫理条例制定特別委員会を設置し、令和2年9月まで20回の調整会議を開催し、令和2年9月定例会において上程・可決となり交付手続きを経て令和2年10月より施行となりました。
【制定目的】
 上尾市長等政治倫理条例制定の目的として、力を不正に行使して自己又は特定の者の利益を図ることのないよう必要な措置を講ずることにより、市政に対する市民の信頼に応えるとともに、市民が市政に対するこの条例は、市政が市民の厳粛な信託によるものであることに鑑み、市長、副市長及び教育長が、その権限又は地位の影響 正しい認識と自覚を持ち、もって公正で開かれた民主的な市政の発展に寄与することを目的としています。
また議員政治倫理条例制定の目的としては、議員は、市民からの厳粛な信託を受けており、市民の代表として高い倫理観と深い識見が求められており、より一層の政治倫理の確立を目指し、議員自らが守るべき規範となる政治倫理の制定が必要であり、この条例は、上尾市議会議員(以下「議員」という。)が、その職務が市民の信託によるものであることに鑑み、市民全体の奉仕者であることを認識し、その権限又は地位の影響力を不正に行使して自己又は特定の者の利益を図ることのないよう議員倫理に関する基準を定めるとともに、必要な措置を講ずることにより、もって公正で民主的な市政の発展に寄与することを目的としています。
【検討・調整を要した課題】
 @調査請求権の要件
 調査請求権は、 調査結果の公表によって受託者である市長等の行為の適否を明らかにし、自省を求めるためのものであることから、当初は、恣意的な解釈による調査請求権の濫用を防止するため 「100分の1以上の連署」を要件としていましたが、 請求権の行使が困難であるとの市民コメントが多数寄せられたことを踏まえ、「100人以上の連署」に引き下げられました。
 A資産公開の対象者
 市民コメントを実施した結果、資産公開の対象者は市長のみではなく、副市長及び教育長も対象とすべきであるとのコメントが多く寄せられました。
 資産公開は「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」において市長に対してのみ義務付けられている制度であることより、副市長及び教育長は、市を統括代表する政治家である市長とは立場が異なると考えられることから、 対象者を当初の市長のみとされました。
 B政治倫理審査会委員の人数
 政治倫理審査会委員の人数は、上尾市コンプライアンス審査会や上尾市行政不服審査会の人数を参考に当初3人としていましたが、人数が少なすぎるとの市民コメントが数多く寄せられたため、より多角的な視点から審査を行えるよう5人に増やされました。
 C政治倫理審査会の会議の公開
 政治倫理審査会の会議は、個人情報やプライバシーに関わる審議を行う可能性が高い等の理由から当初非公開としていました。
しかし、原則公開にすべきであるとの市民コメントが多く寄せられたことを踏まえ、会議は原則公開とし、やむを得ない場合は出席委員の3分の2以上の同意をもって非公開とすることができることとされました。
【条例施行後の運用状況】
 令和3年4月1日の全面施行後、上尾市長等政治倫理条例の運用状況は、次のとおりです。
 @請負契約等の辞退届の提出状況
 令和5年10月1日時点において、市長にあっては6法人、副市長にあっては1法人からそれぞれ辞退届の提出を受けています。
 A市長の資産公開の実施状況
 上尾市政治倫理審査会は、これまで市長が提出した資産等報告書等に対する審査報告書を4度提出しており、いずれも条例に基づき作成されているものとして適正であるとの報告を受けています。
 B調査請求の実施状況
 令和3年4月1日から令和5年10月1日までの間、市民からの調査請求は一度もされていません。

(3)視察から得られた考察
 上尾市においては、「上尾市長等政治倫理条例」及び「上尾市議会議員政治倫理条例」の他に「上尾市職員倫理条例」も令和2年4月に施行されています。
 この条例は、元上尾市長が所有する土地のブロック塀などを公費で撤去・新設するという不適切な工事が行われていたことが指摘され、当該工事に関係していたとされる議員に対して議員辞職勧告決議案が提出されるといった異例の事態となりました。議員が職員に働きかけたときに、なぜ職員は止めることができなかったのか、止めることができればこのような事態を未然に防ぐことができたのではないかというという背景があり、職員の職務に係る法令の遵守および倫理の保持に関して必要な措置を講ずることにより、職務の遂行の公正さに対する市民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、公務に対する市民の信頼を確保することを目的に施行されました。
 この条例に基づき、弁護士などで構成する外部委員による審査会を外部組織として設置し、不当要求行為などへの組織的対応や職員のコンプライアンスに係る調査などを行い、また、職員の職務に対して行われる要望などについて原則記録・保存するなど、コンプライアンスの確保に向けた取り組みを推進しています。
 上尾市においては、市の仕事に関わる市長等・議員・職員に倫理条例が制定されており、お互いにこの条例に基づき市民に対する行政運営の公平性及び透明性の確保を行っています。
 また、議員を対象にする条例と市長等を対象にする条例を別々に制定しており、議員条例は、資産公開を除く5項目を規定し、市長等条例は、市長、副市長及び教育長を対象とし6項目全てを規定していますが、 資産公開に関しては市長のみを対象にしています。各項目について、議員条例と市長等条例とは内容、規定の仕方等は異なり、例えば、請負等の制限に関して対象となる親族は、議員条例は配偶者、1親等内の血族又は同居の親族とし、市長等条例は配偶者、2親等内の親族又は同居の親族としています。また、政治倫理審査会への市民の調査請求は、議員条例は有権者総数の500分の1以上の連署をもってできるとされており、市長等条例は有権者100人以上の連署をもってできるとされています。
 執行権のある市長と執行権のない議員とで内容を異にしており、特に執行権のある市長においては、議員よりも更に高度な内容が求められると考察します。
 例えば公務員採用試験においても、行政に携わる者としての受験資格に一定の欠格事由があります。特に市民の代表である市長や議員には一般の公務員よりも高い倫理観が求められることは言うまでもありません。春日部市においても執行部及び議会、職員が一丸となってコンプライアンスを遵守し、道義的倫理観をもって市民の信頼に応えるべく、政治倫理条例制定について深い議論が必要であると考察します。

視察の様子
Copyright(c) 2007- 春日部市議会公式サイト Kasukabe City Council. All Rights Reserved.