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各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
自民・無所属の会
視察先
大阪府 大東市
視察案件
大東市家庭教育支援事業について
実施日
令和5年7月14日
参加者氏名
山崎 進、金子 進、鬼丸 裕史、水沼 日出夫、石川 友和、山口 剛一、永田 飛鳳、会田 吉幸

視察結果概要

(1)視察先の概要
 大東市は、大阪の東部、河内地方のほぼ中央、生駒山の西側に位置し、東西7.5km、南北4.1km、総面積は18.27㎢で甲子園球場の460個分に相当し、大阪府では30番目の面積を有する市となっています。東は豊かな自然が息づく『金剛生駒紀泉国定公園』を境に奈良県に、西は大阪市に接しています。また、北は門真市、寝屋川市、四條畷市に、南は東大阪市に、それぞれ接しています。
 人口は、令和5年3月末現在で116,963人、大阪府内では16位、世帯数は57,800世帯です。
 大阪市内及び京都府南部方面へは、JR学研都市線で結ばれ4駅(住道駅、四條畷駅、野崎駅、鴻池新田駅)からアクセスができ、大阪市内には、電車で約10分程度という都心へのアクセスの良さを持っています。また、道路も市の中央を南北に外環状線(国道170号)、東西を府道大阪生駒線が走り、交通の便にもたいへん恵まれたところです。
 東部は急峻な生駒山系の山間地、中部から西部にかけては沖積による低湿地平野でその比率はほぼ1:2となっています。平坦地に広がる住宅や商工業向けの都市的な使い方の用地は全体の約65%、逆に農地や山林の自然的な使い方の用地は約35%を占めています。
 広大な緑地公園や自然豊かな山間部の自然を持ち合わせつつ、コンパクトな割に、図書館が3館と充実しているなど、都会と田舎の良いところ取りをした、まさに「ちょうど良い」まちと言えます。
 更に大東市と言えば、のざきまいり、三好長慶、飯盛城跡、と言われるように歴史的な資源も数多く、ハイキングコースでは、当時の石垣を見ることもできる、歴史豊かなまちです。
 また、大東市では自然のなかでのびのびと子育てしやすい大東市として『子育てするなら、大都市よりも大東市。』を掲げ子育て施策に力をいれています。

(2)視察内容
 大東市では、学校での荒れ、いじめ、不登校、そして全国学力調査テストにおいても全国的に結果が下のほうであり、学力が低いという問題を抱えており、そのような背景から、この問題は学校だけで何とかするのには限界があり、家庭や、地域の協力なしに学力向上は難しいことから、家庭に対しても踏み込んでいかなければ問題解決に至らないという考えを基に、家庭教育を強く推し進めていく方向性を市として決断しました。
 平成26年から、学力向上を図るため、教育委員会で学力強化についての検討会を実施し、@学校教育と家庭教育の担い分けが必要である、A教員が集中できる学校教育の環境が必要である、B保護者が安心して家庭教育を行えるようにサポート支援が必要である、と課題の整理を行い、対応として大東市教育大綱(平成27年12月策定)において家庭教育支援を重点大綱として位置づけ、平成28年度からは学校教育部で家庭教育支援事業を開始させました。
 家庭教育支援事業では【家庭教育支援チーム(つぼみ)】を設置し、
@地域協議会
 効果を検証し、大筋の決定を行う。[教育長、教育総務部長、学校教育政策部長、産業・文化部長、福祉・子ども部長、保健医療部長]
A基幹チーム
 地域協議会の決定をもとに事業を運営する。[家庭・地域教育課長、指導・人権教育課長、生涯学習課長、福祉政策課長、こども家庭室および地域保健課の課長級の職員、スクールソーシャルワーカーのうち教育長が適任と認める者]
B相談・訪問チーム
 児童の保護者へのアウトリーチによる支援活動を行う。[スクールソーシャルワーカー、市民サポーター(令和5年6月末現在:73名)]
C家庭教育支援プロジェクトチーム
 家庭教育支援事業の推進、調整。【家庭・地域教育課、生涯学習課、指導・人権教育課の職員、スクールソーシャルワーカー】
という目的、メンバー構成で小学校12校全てにチームを設置し、必ず1人はスクールソーシャルワーカーを置き、チームのチーフとなって事業を行っています。
 また、市が直接、会計年度任用職員として雇用するスクールソーシャルワーカーは10名(2校は併任)であり、社会福祉士または精神保健福祉士または認証心理士の資格を有する方で、週4勤務(学校勤務1回、子育て包括支援センターネウボランド大東1回、教育委員会2回)職務内容としては@家庭教育支援チームの相談・訪問チームのマネジメント、Aネウボランドだいとう、B配置小学校ブロックにおけるソーシャルワークの実践、C関係機関などの会議へ参加及び連携促進、D実践および専門性向上のための活動、Eその他、大東市教育委員会が必要と認めるものを担当しています。
家庭教育支援事業の取り組みとしては
1【家庭教育に関する状況把握調査】
 公立小学校1年生(4月〜5月頃)、4年生(9月〜10月頃)に学校配布からインターネット、または紙媒体で回収
2【アウトリーチ型支援】
 相談・訪問チーム員が家庭訪問を手法とし、幼児教育から学校教育へ環境が大きく変わる時期で、不安や困りごとが多い保護者を9年間の義務業育過程の早い段階から、孤立の未然防止や、学校や保護者間、地域とのつながりづくりを行い、学校、家庭、地域の教育における担い分けを行うため、小学一年生の児童・生徒への限定した訪問支援(R4実績:状況把握調査数841、訪問数142、架電数699、同意あり96%担任の先生とスクールソーシャルワーカーが情報共有、同意なし4%スクールソーシャルワーカーが週1回学校で児童の様子観察、ネウボランドだいとうにつなげた件数51件)
3【サロン型支援(いくカフェ)】
 身近な地域で家庭教育のことを気軽に話し合え、ほっと一息つける場所、時間の提供。種類としては@小学区ごとに行うもの、A教育委員会で主催のもの、B『企業版いくカフェ』登録企業が行うもの

4【セミナー型支援】
@家庭教育後援会(家庭支援チームと大東市PTA協議会主催)
A家庭教育講習会(家庭教育支援チーム主催)B思春期保護者向けセミナー(大東市教育委員会主催)R5年度より実施、中学生が対象
の4つのメニューを主に行っています。
 また、大東市では、令企業との連携として『家庭教育応援企業等登録制度』を令和2年度に設け令和3年度から実施しています。コロナ禍での家庭教育支援には、企業との連携・協働が必要ということから企業がもつ技術等の教育的資源を、教育分野でのSDGsやCSR(企業の社会的責任)に取り組む企業と大東市教育委員会が連携し、家庭・学校・地域が一体となって子どもたちを育てる環境づくりを推進しています。アクションプランの取り組み10項目のうち2つ以上に取り組もうとする企業等が大東市教育委員会に、「大東市家庭教育応援企業等」として登録することができ、登録企業にはステッカーが交付され、市のホームページ等に掲載されます。
 登録する企業側のメリットとしては⑴企業イメージの向上、⑵社員の家庭教育の充実、⑶会社のことを知ってもらえる、⑷人材雇用につながる、⑸職場体験の受入を活用した社員研修の実現が挙げられます。また、職場研修のための講師を無償で派遣するなど他にもたくさんのメリットがあります。
 応援企業登録企業の成果としては、令和5年6月末現在で115団体の登録(市内107市外8)があり、その中で、【サロン型支援(いくカフェ)】の中のB登録企業が行うものである、『企業版いくカフェ』では、令和4年度6事業者で45回実施、令和5年度8事業者で72回の実施が予定されています。

(3)視察から得られた考察
 『子育てするなら、大都市よりも大東市。』というスローガンを掲げている大東市では、学校教育に関して、「教育の基盤は家庭教育にある」という意識を行政だけでなく、保護者、地域、企業に広めながら思い切った舵取りや施策を展開している印象を受けました。
 特に、今回視察した『大東市家庭教育支援事業』の中の家庭教育支援チームの体制づくりや、情報共有のシステムづくりは、学校区を中心として、様々な方たちがつながっており、本市でも取り入れたい部分であると感じましたが、地域性の状況をお伺いしたところ、大東市は基本的に自治会活動が活発であり、特に、だんじり祭りなどがあるためコミュニティーの基盤がしっかりしており、家庭訪問施策を取り入れる際も対応しやすかったという背景を聞き、土地柄、地域性が取り組みには大切であるということがわかりました。
 過程教育支援事業は、法律でも教育基本法の第10条(家庭教育)と社会教育法の第5条1項7号(市町村の教育委員会の事務)の中に、「1、保護者に対する学習の機会」、「2、情報の提供」、「3、家庭教育を支援する(施策)」という形でしか謳われておらず、各自治体では、家庭教育と福祉を関連付けで施策展開をしているところが多くみられますが、大東市では、福祉というよりも教育をメインにして強く施策展開をされている、全国でも珍しい取り組みです。
 また、大東市の背景にある問題点の中の学力の向上面でも、しっかりと総合戦略の中に数値的な目標を掲げ、全国学力調査テストの結果において、100(偏差値で表すと50)を目指しており、現在、99まで効果がでており、学力の向上にもしっかりとつながっている状況です。
 いじめについては、途中からカウントの仕方が変わったため、今は上昇傾向にありますが、カウント方法が変化する前は、順調に下がっている傾向にあったということです。ただ、不登校に関しては、大東市は315人約4%であり、年々うなぎ上り、全国と同じ傾向で推移しています。
 今回の取り組みの中で1番注目させていただいたのは、令和3年度から実施されている『家庭教育応援企業等登録制度』と、そこから繰り広げられる令和4年度より事業開始された『企業版いくカフェ』について、とても面白い取り組みであると考えます。
 行政が中心となって行う小学校区ごとのいくカフェ、教育委員会主催のいくカフェは、対象者が限定的であったり、参加される方も同じような人という結果だそうですが、『企業版いくカフェ』は、企業や団体のノウハウも生かすことができ、自由度も高く、座学のように話を聞くだけではなく、実際に企業の特色を生かした体験型の集いも行うことができ、新規ユーザーの獲得がしやすかったり、そこから、ファンになってリピーターも多くなっているという結果がでているようです。
 行政としても、企業版いくカフェに対し、公募、書類審査、委託契約という形で令和5年度の実績で1団体あたり20万円を上限とし、予算額120万円の支援を行っています。企業・保護者・家庭教育支援チームの連携体制もしっかりと形成されていて、企業側のメリット、保護者のメリット、行政のメリットがお互いにWin−Winの関係構築がされていて、企業の従業員=保護者・地域住民であったり、家庭教育について、学ぶ、知る、機会の創出や、行政だけでは限界がある家庭教育の情報がより多く届けられるなどの効果も期待される取り組みであることがわかりました。
 本市でも、SDGsパートナーズとして229の企業・団体の登録をいただいており、その登録団体をどのように施策へ参加してもらい展開していくか、というのは、今後の課題となっている今、企業と教育の連携としての施策について、今回の大東市の取り組みのような施策を考え実践していく必要があると考察いたします。

視察の様子
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