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各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
新風会
視察先
岩手県 北上市
視察案件
あじさい型スマートコミュニティ構想モデル事業について
実施日
平成29年10月27日
参加者氏名
小久保博史 栄寛美 海老原光男
古沢耕作 吉田剛

視察結果概要

(1)視察先の概要
 北上市は、岩手県のほぼ中央、北上盆地の中ほどに位置し、日本海側の気候の影響を受けやすく、積雪量も比較的多い地域となっている。人口は9万2,959人(平成29年4月末日現在)で、同県他市と同様、平成17年をピークに人口は減少傾向にあるが、製造事業所従業員者数、製造品出荷額、農業算産出額は県内でも上位にあり、農業と工業のバランスがとれた活気ある都市として、全国的にも注目されている。
 また、市内をJR東北本線、国道4号が南北に貫き、JR北上線、国道107号が東西に走っている。さらに、東北新幹線、東北縦貫自動車道、東北横断自動車道など高速交通体系が整備され、首都圏と2時間半、日本海と1時間半で結ばれるため、「北東北の十字路」と呼ばれている。
 平成23年3月に策定した同市総合計画の下、将来の都市像として掲げる「豊かな自然と先端技術が調和した魅力あふれるまち」の実現を目指してまちづくりに取り組んでいる。

(2)視察内容
 同市は、2011年に発生した東日本大震災を契機に、地方自治体が「自立・分散型のエネルギー」を地域防災拠点として整備することの必要性を強く認識し、再生可能エネルギーを有効活用することで、災害に強い、自立的・持続的なコミュニティを構築することを目指した。
 その考えを具現化したのが、同市が取り組む「あじさい型スマートコミュニティ構想」であり、大変興味深く、本市にとっても大いに参考になる事業であるため、詳細な同事業の内容や、現在までの経緯や成果、そして、今後の課題や目指すところについて、同市担当者よりレクチャーを受けるものである。
 ちなみに、「あじさい型」とした理由は、都市を構成する各地域コミュニティごとに歩いて移動できる範囲に生活を支える都市機能を集中させながら、他地域との連携が広がっていくイメージが、あじさいの花が咲いている様子と重なるために採用された。
あじさい型スマートコミュニティ構想モデル事業

■事業導入の背景と経緯
 東日本大震災発生時、市内では震度5強を記録し、数日間に渡って停電や断水、通信や交通機関が停止して、市民生活に大きな影響を及ぼした。その際、停電による通信インフラの寸断により、災害対策本部の情報と地域の被害状況の相互共有が出来ず、迅速な対応に課題を残した。
 これを受け、平成24年3月、経済産業省の「スマートコミュニティ導入促進事業」(事業期間=2012年〜2015年、補助率=2/3)に申請して採択を受け、同年12月に同市あじさい型モデル事業のマスタープランが認定された。

■事業目的
 既存建物、施設へ段階的に再生可能エネルギーを分配配置することで、市関連施設で使用する電力の再生可能エネルギー比率を向上させて、面的に災害に強いまちづくりを促進する。
 
■目標
@複数拠点に設置された太陽光、蓄電池等により、本庁舎の使用電力の20パーセント以上を分散電源で担う
A災害時の災害対策本部棟の電源を確保する。
Bエネルギーの地域内循環を構築する。
■実施内容
 行政(北上市)、民間業者(株式会社北上オフィスプラザ)、エネルギー事業者(株式会社NTTファシリティーズ)の3者による共同事業であり、具体的な事業は以下の通り。
・メガソーラー整備・運営事業…メガソーラー(2.9MW)を建設し、2014年3月、売電開始。936世帯分の使用電力量を発電。
・本庁舎エネルギーマネジメント事業…2016年1月、運営開始。構築設備は太陽光30kW、蓄電池300kWh。電力使用量の見える化画面等を表示。
・ソーラーパーク整備・運営事業…2015年4月、運用開始。北上陸上競技場等の防災力強化(2016年に開催された、いわて国体では、会場として使用された同競技場の電光掲示板横に太陽光パネルやLED街路灯などを設置することより、来場者に低炭素社会への取り組みをアピールした)
・防災拠点強化・運営事業…2015年4月、運用開始。交流センター16か所に太陽光・蓄電池を導入。また、放電機能付受電器を導入しEVによる拠点間の相互バックアップ体制を構築。
・オフィスアルカディア北上・太陽光発電等整備運営事業…2016年1月運用開始。産業支援、企業が多数入居する北上オフィスプラザに分散電源を導入。
・CEMS整備・運営事業(NTTファシリティーズ)…分散電源の最適制御、新電力に必要な需給管理機能を備えたCEMSを構築。現在は、北上新電力によりメガソーラー電力を公共施設に供給している。
・電力地産地消事業(北上新電力)=地産エネルギーの市内電力供給
■事業対象施設
・北上市役所本庁舎
・北上第1・第2ソーラー発電所(かむいソーラー)
・北上陸上競技場
・オフィスアルカディア北上
・電気自動車用、EV・充電器

■事業の成果と、今後の取り組み
 「複数拠点に設置された太陽光、蓄電池等により、本庁舎の使用電力の20パーセント以上を分散電源で担う」という目標はすでに達成され、再生可能エネルギーを有効活用することで、災害に強い、自立的・持続的なコミュニティを構築する、という同市の思いは、着実に成果を残した。
 今後は、環境省の「公共施設等先進的CO2排出削減対策モデル事業」(事業期間=2016年〜2020年)補助率=2/3)にも採択されたことから、公共施設における再生可能エネルギーの最大導入と徹底的なエネルギー消費削減の実現を目指す。

(3)視察から得られた考察
 新風会では、平成28年2月10日に浜松市のエネルギー政策について行政視察を行ったが、その際、感心させられたのは、東日本大震災発生の直後に、市長の強力なリーダーシップの下、エネルギー問題を地域の課題として解決するための組織を立ち上げ、その後の新電力会社設立までに至ったことだった。
 正に、その点は北上市でも共通しており、震災を受けて市長、市職員で危機感を共有し、迅速に、再生可能エネルギーの積極的導入を軸とした「あじさい型スマートコミュニティ構想モデル事業」という新たな事業にチャレンジすることで、災害に強い、自立的・持続的なコミュニティの構築を目指したことである。
 同市には、新市庁舎を建設する構想もあったが、市庁舎は耐震補強で対応することに計画を変更し、まずは優先して同事業を推進することを決めた。つまり、新市庁舎建設よりも、災害時にも自立できるまちづくりの構築を選んだ訳である。
 翻って、春日部市においても、新市庁舎建設の計画が淡々と進められているが、市民の安心・安全な生活にとって、何が一番優先されるべきなのか。非常に考えさせられる、意義深い行政視察であった。
 その上で、やはり本市においても、エネルギー問題を自らの地域で対応する課題としてとらえ、その考え方に基づいた新たな理念の環境・エネルギー政策を作成するとともに、災害時にも役立つ自前の電力を持つことを、真剣に考え始めるべきである、と改めて主張したい。

視察の様子
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