各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書
視察報告書
- 委員会名・会派名
- 新風会
- 視察先
- 奈良県 奈良市
- 視察案件
- 奈良市立並松小学校の跡地活用について
- 実施日
- 平成29年6月27日
- 参加者氏名
- 小島文男 小久保博史 栄寛美
海老原光男 古沢耕作 吉田剛
視察結果概要
(1)視察先の概要
奈良市は、奈良県北部に位置する同県の県庁所在地であり、平成14年に中核市に移行。面積は276.94㎢、平成29年4月1日現在の人口は359,666人。少子高齢化が進んでいるが、近年の近隣市の編入(合併)により、世帯数は増えている。
平城京があった歴史ある古都としてその名は広く知られ、東大寺や西大寺、薬師寺など、歴史的価値の高い寺院が多く存在していて、年間を通じて国内外から多くの観光旅行者が訪れる。
一方、市域は東西に広がっており、東部は山間部、中東部は観光都市、西部は住宅地中心で、地域によってその趣は大きく異なる。
また、市内に高速道路はなく、市街中心部にあるJR奈良駅、近鉄奈良駅が交通網の要となっているが、市民にとって奈良駅といえば中心部により近い近鉄奈良駅を指すことが多い。
(2)視察内容
■視察内容
「市立並松(なんまつ)小学校の跡地活用について」
近年の少子化による児童生徒数の減少を受け、全国的に小学校、中学校を廃校にせざるを得ないケースが増えており、本市も例外でない状況の中で、今後、廃校をどう再生・利用していくかが、大きな課題となっている。
様々な廃校利用の事例がある中で、奈良市では廃校跡地をサッカーアカデミーを運営する民間企業に貸し出し、学生寮として使用している。このケースを、ユニークな参考事例として考察するべく、視察するものである。
■背景
人口減少率の高い同市都祁(つげ)地区には、元々、地元企業の有限会社天平フーズが経営する宿泊可能なレジャー施設「大和高原ボスコヴィラ」があり、広大な敷地内にはグラウンドゴルフ場や、バーベキュー場、温泉施設を有していたが、施設内にサッカー場を整備したのを契機に、高校生を対象としたサッカーアカデミー「BoscoVilla SoccerAcademy」を開校した。
これは、同地域の課題として、過疎化に伴う県立山辺高校の定員割れの問題があり、サッカーアカデミーを通じて問題解決につなげて欲しい、という地元住民の声に応えるものでもあった。
■事業の概要・目的
本事業の実施に当たっては、奈良市、並松地区自治会連合会、奈良県立山辺高等学校、そして、サッカーアカデミーを運営する有限会社天平フーズの4者で協定を締結した。廃校を利用した同事業を推進することで、過疎化や地元高校の定員割れ、雇用減少等、地域の様々な問題の解決につなげることを目指している。
ちなみに、当初は廃校を市が運営業者に貸与する形で、寮生ひとりあたり、月々3,000円の使用料が支払われる契約で、将来的には運営業者に売却することを視野に入れている。
■学生寮として使用している並松小学校の施設概要
土地面積:14,706u 建物面積:3,673u 築年数:昭和61年建設
■アカデミー生の生活と現状
学生寮に入寮するのは、基本的に全国から県立山辺高校に応募して入学試験をパスして同校に入学し、同時にサッカーアカデミー生となる生徒たち。定員は1学年25名、3学年合計で75名。初年度となる今年は、奈良県近県、また埼玉県等から受験した生徒を含む、20名が入寮している。
サッカーアカデミー生たちの平日のスケジュールは、毎日、高校の授業を終えた後、約2時間の練習、寮に戻って夕食を済ませ、午後8時から10時までは、語学学習の授業を受けている(週2日)。これは、サッカー選手としても、ひとりの人間としても、将来、世界で通用する人材として活躍することを期待しての同アカデミーのカリキュラムである。
(3)視察から得られた考察
本事業は、廃校活用というテーマを、行政と地域の住民、企業が議論して方向性を決めていくことで、地域の諸課題を解決しようとしている点で、非常に興味深い。
文部科学省においても、「未来につなごう、みんなの廃校プロジェクト」を立ち上げ、ホームページで全国の地方公共団体における廃校の事例紹介を行うとともに、廃校施設の情報、そして、その活用を望む民間企業等の情報も併せて掲載して活用ニーズとのマッチングを行っている。
その効果もあり、廃校活用の事例としては、介護施設や老人福祉施設、知的障害者授産施設、保育所、企業のオフィス、工場、病院など、ユニークで多種多様なケースが生まれている。
本市においても、廃校活用の問題は早期に取り組むべき重要な課題である。今回視察した奈良市の事例に習い、市内外に広く情報を開示して、地元住民との意見交換の場や、活用意欲を持つ民間企業や社会福祉法人、NPO法人等からの具体的提案(プレゼンテーション)を受ける場を積極的に設けていくことが有効な廃校活用へつながると考えられる。

視察の様子