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各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
新風会
視察先
北海道 室蘭市
視察案件
公共施設再編に伴う新たな複合公共施設整備事業について
実施日
平成28年7月5日
参加者氏名
小久保 博史、栄 寛美、海老原 光男、古沢 耕作、吉田 剛

視察結果概要

(1)視察先の概要
 室蘭市は北海道南西部に位置しており、西側の馬蹄形をした絵鞆半島を中心に市域が広がっていて、南東は太平洋に面している。人口87,883人(平成28年3月31日現在)。
 開港140年の歴史を誇る室蘭湾を擁し、鉄鋼など製造業を中心とした北海道を代表する工業都市として発展を遂げてきたが、昭和40年代をピークに人口は減少に転じ、少子高齢化が加速している。
 また、近年では室蘭湾を中心とする工場群が織り成す「工場夜景」が注目され、観光資源となっているほか、ご当地グルメとして、豚肉を使った「室蘭やきとり」やカレーラーメンが人気を得ている。
 一方、同市の公共施設は、昭和30年から40年代に建てられたものが多く、今後、多くの施設で維持管理に伴う、補修や修繕費の増加が見込まれることから、耐震診断結果を契機とした公共施設再編整備を検討する中で、平成26年3月に「室蘭市複合公共施設基本計画」を策定した。
 同計画により進行する4施設の再編(集約)は、今後の公共施設管理に関して同様の問題を抱える本市にとって非常に参考となる事例であることから、同事業の視察を行うものである。

(2)視察内容
 室蘭市複合公共施設基本計画に基づく、「学校跡地を利用した複合公共施設整備」について、その背景や目的、事業概要、そして、事業手法等に関して担当者より説明を受けた。「政策形成過程からの市民参加」と、採用した包括委託方式「DBO」を、キーワードとして捉えている。

■背景・目的
・同市は、平成22年から23年に市内公共施設の耐震診断を実施。21施設中、18施設で耐震性に課題があることが判明し、耐震改修や複合化の整備に向けた基本的な考えをまとめた。
・学校の統廃合により空いた土地を、室蘭市公共施設跡地利用計画に位置付け、公共施設を建て替えて活用することにより、まちなか再生に係る機能導入を図る。
・単に公共施設をいくつか集めて複合化するのではなく、「子供からお年寄りまで気軽に集える交流拠点」として整備を図ることで、世代間の交流を促す機能を持つ施設を建設する。
■複合施設・概要
・総合福祉センター、青少年研修センター、中島会館(文化活動等の拠点施設のひとつ)、市民活動センターの4施設を集約する。
・施設規模は、延床面積4,300u、2階建て。多目的室や音楽スタジオ等の貸館機能を有するほか、市民活動推進機能(交流サロンスペース、印刷室等)、図書機能(読み聞かせの部屋、自習スペースあり)、子育て機能(遊び場等)、その他、カフェなどが整備される。
■市民意見の把握
・多世代の交流拠点を目指すことから、幅広い市民意見の把握を行う。「子育て世代の定住化」が課題であるため、特に若年層にターゲットを絞った意見交換を実施。
・「まちづくり協議会」を立ち上げ。室蘭工業大学講師をコーディネーターに迎え、4名の大学生の協力も得て、施設見学・事前勉強会、そして、「施設の魅力アップにつながる機能を考えよう」というテーマのワークショップ(全4回)を実施。50名程度の定員に対して70名以上の応募があり、中高生から年配の方までの参加があった。
■市民意見を盛り込んだ基本計画
・ワークショップでは、多くの参加者から図書機能、子供の遊び場機能、カフェ機能等についての要望があり、最終的に、それらをほぼ100パーセント取り入れる結果となった。正に、形だけではない、実際に市民の声を大幅に反映した計画が策定された。
■民間活力を活用した事業方式の採用
・さまざまな議論の末に、民間資金によって公共施設等を整備するPFI方式(本市の小中学校エアコン整備事業にて採用)と類似している、DBO方式の採用に至った。同方式では、資金調達は公共が担い、設計・建設・維持管理・運営については、民間業者に委託する形となる。
・事業費としては、旧校舎解体、調査・設計費、建設費、外溝整備費(駐車場・屋外施設・緑化)を合わせて、20億1千万円を想定している。
なお、平成28年9月に事業者を決定し、平成30年12月の供用開始を予定。

(3)視察から得られた考察
 室蘭市と同様、本市の公共施設もその多くが老朽化がかなり進行している。
 春日部市公共施設白書によると、人口減少に伴う税収の伸び悩みや社会福祉関連経費等の増大に伴う財政逼迫のため、今後は「これまでと同様の水準で公共施設への投資を継続していくことは困難」とし、その管理や運営については、その方針を大きく転換させる必要があると検証している。
 具体的には、市民文化系施設の維持管理・運営に掛かるコストの総額は、年間で約4億8500万円(平成25年度)、一日当たりの平均コストは約32万4,100円となっており、中でも、建築後30年以上が経過している市民文化会館、中央図書館はその平均値を上回っている。
 そして、今後30年間で市民文化系施設の大規模改修・更新等に掛かる費用は、約54億円と推計されている。
 こうした本市の状況を考えると、公共施設の集約・複合化によって維持管理コストの削減を図ろうとする室蘭市の選択そのものが大変興味深く、大いに参考にすべきである。
 また、最大限、市民の声を反映するため、ワークショップ等を通じて政策形成過程を共有し、実際にそこでの議論(提案)を取り入れている点に関しても、学ぶべきだろう。
 現在、本市では、新市庁舎の移転建替えについて協議が行われており、既存の市民文化系施設との複合施設とする案があるが、長期的な維持管理・運営費を抑える視点からも、検討に値する案といえる。
 また、市庁舎を含む各公共施設の整備に際しては、多くの市民の声を集約することは当然であるが、集めるだけではなく、出来る限りその意見を計画に取り込む方向での対応が重要であると再認識した点においても、意義深い視察となった。

視察の様子
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