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各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
新風会
視察先
静岡県 浜松市
視察案件
浜松市のエネルギー政策(株式会社浜松新電力の設立)について
実施日
平成28年2月10日
参加者氏名
小久保 博史、栄 寛美、海老原 光男、古沢 耕作、吉田 剛

視察結果概要

(1)視察先の概要
 静岡県浜松市の人口は平成28年2月1日現在で808,925人と静岡県第1位、面積は1558.06平方キロメートルで、岐阜県高山市に次ぐ全国2位の広大さを誇るととともに、四方を海や山に囲まれた自然豊かな地域でもある。
東京オリンピックが開催された昭和39年に東海道新幹線が開通して浜松駅が完成し、その5年後には東名高速道路が開通して浜松インターが設置されるなど、交通網が整備されていく中で急速な経済発展を遂げ、自動車産業や光・電子分野において高度な技術の集積が進む現在の礎となった。
そして、平成19年4月1日には、全国で16番目となる政令指定都市に移行している。
さらに、同市は全国でも日照時間が長いことで知られ、気象庁発表の「全国気候表2011年」では、年間の日照時間が2386.2時間で日本一となり、その後も上位を維持している。

(2)視察内容
 同市は、2011年の東日本大震災の発生による原発事故を受け、市民生活に大きな影響を与える電力については、地域で安定的に確保することが重要であるとの結論に達し、「浜松市版スマートシティ」の実現に向けた取り組みを開始した。
その延長上の具体的な取り組みとして、昨年10月15日、同市は地元企業とともに新電力「株式会社浜松新電力」を設立し、本年4月1日より市内の公共施設や民間需要家に自前電力の供給を開始する予定。
同市のエネルギー政策、そして、新電力会社の概要は以下の通り。
■新エネルギー推進事業本部の設置
地域の電力を持続的かつ安定的に確保する、という課題に対応するため、まず、市長直轄の「新エネルギー推進事業本部」を設置してエネルギー自給率向上に向けた新エネルギー導入に関する政策の推進を開始。
併せて、官民一体での取り組みの必要性から、内部組織としての「浜松市エネルギー推進本部」と、経済関係者・有識者らが組織する「浜松市エネルギー政策推進会議」を立ち上げ、両者が連携して政策を推進するための環境を整えていった。
■エネルギービジョン目標値
将来の電力自給率等について、市独自の目標値を明確にしている。
・再生可能エネルギーと自家発電設備による電力自給率=2030年度/20.3%(2014年度末/8.2%)
・再生可能エネルギー導入量=2030年度に、2011年度の5.1倍に。
・自家発電設備(ガスコージェネレーション)=2030年度に、2011年度の2.8倍に。
・省エネルギー目標=2010年度の総電気使用量を、2030年度までに10%削減。
■再生可能エネルギー導入に対する取り組み
・太陽光発電推進施策(2014年8月の経産省の発表によると、10kW以上の施設導入件数では、全国の市町村の中でトップを達成)
・スマートハウス化の推進(事業費補助)
・市有地を活用したメガソーラーの建設
・公共施設屋根貸し太陽光発電事業(市内全小中学校の屋根を使用)
・バイオマス発電の導入
・その他
■株式会社浜松新電力の設立
・出資金=同社の資本金は6,000万円。NTTファシリティーズとNECキャピタルソリューションの25%を筆頭に、地元企業(鉄道、建設、金融機関等)が出資し、浜松市は8.33パーセント、金額にして500万の出資。
・事業規模=平成28年4月1日から事業を開始し、当初の事業規模は約1.1万kWを想定。
・電力供給先=始めは高圧受電の需要家が対象。その後、事業規模を拡大していき、低圧受電の需要家へも拡大予定。
・方向性=同者が市の推進するスマートシティも担い手となり、強靭で低炭素な社会(浜松版スマートシティ)を構築する。

(3)視察から得られた考察
まず、大変感心させられたのは、東日本大震災が発生したのが平成23年3月11日。
その次年度の平成24年4月には、エネルギー問題を地域の課題として課題を解決するための組織を立ち上げたこと。ここから、同市の先進的なエネルギー政策の第一歩が踏み出され、その後の新電力会社設立までにつながったといえる。
担当者からは、その第一歩の段階において、市長の思いと強力なリーダーシップが大きな役割を果たしたとの説明があった。
そうした市のトップが抱く危機感と課題解決への情熱が、結果として、地元企業を巻き込んだ「オール浜松」の体制を作り上げた。
そのことは、エネルギー政策に限らず、あらゆる施策の推進における教訓となるものだろう。
最近、群馬県中之条町や太田市、福岡県みやま市など、電力の地産地消を目指して、いわゆる「ご当地電力」に乗り出す自治体が全国で増えていて、その形態は様々だが、地元企業中心に株式会社を設立した「浜松方式」は、自治体のリスクを減少させられるメリットもある。実際、浜松市は500万円のみの出資により、今後の事業展開次第では、毎年1,000万円近い収入を得られる試算もされている。
本市においても、エネルギー問題を自らの地域で対応する課題としてとらえ、その考え方に基づいた新たな理念の環境・エネルギー政策を作成するとともに、災害時にも役立つ自前の電力を持つことを真剣に考え始めるべきではなかろうか。

視察の様子
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