各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書
視察報告書
- 委員会名・会派名
- 新風会
- 視察先
- 宮城県 南三陸町
- 視察案件
- 東日本大震災における被害と復興状況について
- 実施日
- 平成26年7月3日
- 参加者氏名
- 小島文男 小久保博史 栄寛美 海老原光男 古澤耕作 吉田剛
視察結果概要
(1)視察先の概要
宮城県の北東部、本吉郡の南部に位置し、志津川湾、伊里前湾に面する町。湾内には椿島、竹島、船形島、野島などの島があり、リアス式海岸特有の優れた景観を持つ。沿岸部一帯は南三陸金華山国定公園の指定を受けている。西・北・南西は北上山地の支脈に連なっており、町土の70%以上は森林である。
リアス式海岸の地形的な特性から津波の影響を受けやすく、近世以前においては平安前期の貞観地震(869年)にともなう大津波など、近代以降では、1896年(明治29年)の明治三陸大津波、1933年(昭和8年)の昭和三陸大津波、1960年(昭和35年)のチリ地震津波によって大きな被害を受けている。そのため、沿岸部には、防波堤や防潮堤、水門などが設置されている。しかし2011年(平成23年)の東日本大震災によって被災し、特に大津波による被害は甚大となった。この地殻変動は先の貞観地震以来1141年余りを経て繰り返された現象と見なされている。 また、この地殻変動によって当地域内の志津川地区の地盤は、水平方向に442cm、垂直方向にマイナス75.27cm移動したことが、GPS(全地球測位システム)を用いた国土地理院測地観測センターによる分析の結果、明らかとなった。
(2)視察内容
被害状況について
建物被害(概数)
南三陸町全体の住宅被害
・全壊、流出 3142戸
・大規模半壊 94戸
・半壊 75戸
計 3311戸
人的被害(南三陸町に住所を有する者)(H25/3/31現在)
死者 524名 警察発表 死者 566名
行方不明者 221名 行方不明者 223名
計 745名 計 789名
現在までの復興状況について
避難者・仮設住宅の状況
・避難者は、H24年5月末時点では、県内外に合わせて929世帯がみなし仮設住宅等
へ入居していたが、H26年5月末時点では677世帯まで減少している。
・仮設住宅数 2,195戸 ※H23年8月末までに整備完了
町内 52か所 1709戸
町外(登米市)6か所 486戸
・仮設住宅入居戸数 1959戸(世帯数1727世帯 4951人)※H26年5月20日現在
商工業の推移
・473事業所が被災し、262事業所が営業を再開
・工場、店舗等、仮設施設により85事業所が再開。
・H23年4月より毎月復興市を開催し、同年12月に「伊里前復興商店街」、H24年2
月に「南三陸さんさん商店街」がオープン。
・「語り部」等、震災体験を伝えるツーリズムの実施
農業の状況
・農地 復旧対象面積246ha 復旧工事対象面積224ha(全て着手済)
うち完成済み 73.5ha
・水稲作付面積 震災前285ha H25作付面積 144ha
・園芸 復旧対象面積6.8ha うち着手済 3.3ha
・施設園芸 被災施設158棟 復旧済施設61棟
水産業の復旧
・町管理漁港 被災数19港 復旧工事着手19港
・漁船 被災前2,194隻 被災後 約1,000隻
復興計画について
・平成32年度を目標年とする、「震災復興計画」を策定
・被災地の市街地・旧住地復興のための事業は、H27年度末から完成箇所から順次引き渡しを行い、災害公営入居予定はH28からH29年度中を予定
・被災市街地復興土地区画整理事業は、H30年度に換地を予定。
・平成27年度に公立志津川病院開業に向け、建設工事を行っている。
今後の課題について
・震災復興計画を実施していくためにも、国からの継続的な財政支援が不可欠
・被災前と同規模・内容での単なる復旧にとどまらず、町の将来の発展に資する施設の高度化など、創造的復興に向けた取り組みにも柔軟な対応が必要である。被災した魚
市場は、産地間競争や消費者ニーズ等を考慮した「衛生管理型施設」としての復旧が不可欠
・浸水し災害危険区域となった区域(移転跡地)では、防災集団移転促進事業等で買い取った土地が点在しているため、復興に向けた土地利活用の妨げとなっている。一方
で、現行制度では都市計画区域外における整備手法が乏しく、かつてのにぎわいを創出するためにも、制度の柔軟な運用による土地の再編整理及び嵩上げが不可欠
・JR気仙沼線の鉄路復旧については、津波安全対策のためのルートの移設や、堤防整備に伴う線路の嵩上げ等が必要となり、膨大な費用がかかるため(総事業費700億円:
JR東日本試算)、その一部は行政に公的支援が求められている
・被害が甚大な漁港周辺では、地盤改良等が必要であるが復旧に時間を要する地区もあり、再建先が決まらないため、グループ化補助金を利用できない者もいる
(3)視察から得られた考察
東日本大震災が発生をしてから3年半という時間が経過したが、復興はまだまだ入り口なのだと改めて実感をした。
移転先の建設は順調に進んでいるようですが、移転跡地の土の嵩上げ等は、まだほぼ手付かずの状態で、本当に計画年度で完成するのか心配になるほどであった。
地域と国が一体となって進めていかなければならない復興事業の大変さを再認識をした。
今回の視察で一番耳に残っている言葉は、想定を当てにしてはいけないという言葉でした。それはつまり、想定外の現象がおきても当たり前であるという認識をもち、地域の減災・防災に取り組んでいかなければならないという事ではないかと考える。
今後の防災計画に対して、そういった認識をもち、対応できるようにしなければならないと実感をした。

視察の様子