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各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
緑新クラブ
視察先
山梨県 甲州市
視察案件
高齢化社会とオンデマンド交通について
実施日
平成25年1月30日
参加者氏名
矢島章好、片山いく子

研修結果概要

(1)研修先の概要
 参加した研修会は、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 人間環境学専攻オンデマンド交通研究チーム主催の「第7回 オンデマンド交通カンファレンス」。
 この研修会は、共催が山梨県甲州市、 後援が国土交通省関東運輸局で、オンデマンド交通が高齢化社会へどのような効用をもたらすのか、実際に運行している三重県玉城町と甲州市の実例を学び、まとめとして、「高齢者社会のコミュニティとオンデマンド交通」というテーマで東京大学新領域創成科学研究科・社会文化環境学の鬼頭秀一教授の提言を伺った。

(2)研修内容
@地域公共交通の確保・維持に向けた国土交通省の取り組み
【講師】国土交通省東運輸局企画観光部交通企画課課長 榎本 考暁氏
 公共交通を取りまく現在の状況と課題を分析し、その課題解決のため国土交通省が取り組んできた制度や法律上での支援策や財政上の支援策を提示した上で、これまでの活用例の中から具体的に活性化を実現した事例を紹介。併せて今後の方向性について伺った。
A高齢者が利用するオンデマンド交通
【講師】東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 大和 裕幸氏
     順風路株式会社 神谷 聖二氏
【講演内容】
 予約制の乗合い交通機関であるオンデマンドは、
・乗合いであることによってタクシーよりも高効率となり、タクシーよりも運賃が安い
・停留所を自由に設置でき、また行き先を指定できるため、路線バスよりも便利
 などの特徴から、高齢者の移動手段に適した交通機関であること。さらに運行する側によっては、
・乗客がいなければ運行しないため、路線バスよりは効率的な運行ができる
 などの特徴があげられ、さらに予約時間に回れる仕組みや予約の簡便化などのオンデマンドの仕組みの解説とともに、導入事例紹介と、「福祉タクシー」「買い物バス」「病院の送迎」「コミュニティバス」など、さまざまな利用の仕方が紹介された。
B山梨県甲州市の取り組み
【講師】甲州市市民生活課課長 飯嶋 喜志男氏
【講演内容】
 平成17年に3市町村で合併して誕生した甲州市は、合併後も新市の交通体系についてのすりあわせが進まなかったことから、国の支援を受けて「甲州市生活交通ネットワーク計画」を策定するにあたり、市が抱える課題を解決するための公共交通のあり方を検討。そこで見えてきたものは、
・まもなく30%に達する高齢化率の高さ
・年間1億2000万円をつぎこんでも便利にならず「空気を運んでいる」との批判が強かったそれまでの交通施策
 などであった。また、国民健康保険の医療費の8割が入院医療費であることから、高齢者が通院できる移動手段の確保や、運転免許を返上しても、高齢者が自由に外出できる交通システムを構築する必要があると、明確に目的をしぼりこんだ。
 すでに市民が自主的に乗合タクシーの運行に取り組んでいたこともあり、オンデマンド交通に絞り込んで住民説明会や人口3万40000人のうち4000人に対してアンケートを実施した。そのきめ細やかさはその後の利用率に反映されていることが分かった。
 また、あえて停留所間の距離を、便利な200m間隔から高齢者がぎりぎり歩ける300mにしていること、自宅から目的地ではなく、停留所を設けることで自然に地域住民での見守りにつながるなど、高齢者施策とリンクした交通政策になっていることが参考になった。
C三重県玉城町の取り組み
【講師】三重県玉城町総務課長 林 裕紀氏
【講演内容】
 玉城町のオンデマンドバスは「元気バス」と名づけられているように、以前運行していた「福祉バス」の利便性の向上を図るために導入したもの。 「安心・元気な町づくり事業」として社会福祉事業が運営を担っている。
 ICT技術を活用して、運行管理や予約システムを確実で便利なものにするために、高齢者でも簡単に操作できる仕組みを工夫している。利用者が一人1台スマートフォンを持ち、タッチパネルもさまざまな場所に設置されていて外出支援サービス、安心情報配信サービス、安心見守りサービスといった高齢者支援策を展開している。
 その成果が徐々に現れ始め、「介護予防事業」に参加する人数が増えるのと併行して、高齢者医療費の伸びが鈍化し、中でも、入院医療給付費が減る傾向となっているとのこと。外出し、人と触れ合うことが高齢者の元気を支えることが実感できた。
D高齢者社会のコミュニティとオンデマンド交通
【講師】東京大学新領域創成科学研究科・社会文化環境学 鬼頭秀一教授
【講演内容】
 高齢社会が進む中で、最も求められているのは新たなコミュニティの形成であり、地域の中での顔の見える関係での支えあいが第一義的に求められていることはもちろん、さらに、高齢者が出かけて新たなコミュニティを作っていくことも大事である。
 その際、交通機関は単に人や物を運ぶという機能だけでなく、乗り合い、ということで生まれる人と人との交流に深く関わり、さらに地縁や血縁を超えたコミュニティを再構築していく鍵を握っている、というお話は、示唆に富んだものだった。

研修の様子
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