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所得税法第56条廃止を求める意見書を国に提出することを求める請願

請願第3号 所得税法第56条廃止を求める意見書を国に提出することを求める請願

受理番号
請願第3号
受理年月日
令和5年5月19日
委員会付託日
令和5年5月31日
付託委員会
総務委員会
議決結果
不採択
議決年月日
令和5年6月19日
紹介議員
並木敏恵
大野とし子
今尾安徳
木下三枝子

請願の内容

受理番号:請願第3号
 所得税法第56条廃止を求める意見書を国に提出することを求める請願

請願の要旨
 所得税法第56条を廃止するよう国に意見書を上げてください。

理 由
 地域経済の担い手である中小業者の営業は、家族全体の労働によって支えられています。従業員に労働をさせた場合には賃金は経費になりますが、家族従業者が家業で同じ労働した事実があっても、その労賃を経費にする事を所得税法第56条(以下56条)は禁じています。家族従業者はどんなに働いても所得は認められず、事業からの法律上の控除が、配偶者86万円、その他の家族は50万円です。8時間労働の所得として換算とすると時給358円と208円となり、労働基準法の最低賃金の半分にもなりません。産業労働として働いているのに、法律が労働としての事実を否定しているのです。労働したらそれに見合う賃金を得ることは、憲法で保障された基本的人権であり、現代日本では誰も否定できないはずです。
 所得税法第56条があるため、家族従業者は、住宅や車のローンが組めず、交通事故の補償日額は専業主婦5700円に対して、事業専従者の配偶者は2356円程度で、余りに低い日額です。家族従業者の労賃が価格単価の必要経費に組み込まれないため、下請け単価も低単価・低工賃とされる構造的な要因となっています。労賃の無い基準で様々な社会保障が計算され、大きな社会的損失を受けています。この条文は、家族従業者の個人としての基本的人権を認めず、法の下の平等に反し、家族従業者の経済的自立を侵害し社会的不利益をもたらし、それが構造的に零細事業者の衰退に拍車をかけ、後継者不足の一因ともなっています。
 56条は、明治20年の所得税の施行に伴い、明治時代の戸主制の下に制定された封建的な世帯課税の考え方が、そのまま残っているものです。戦後シャウプ勧告により、基本的人権を尊重した個人単位課税が原則の現行法が施行されましたが、家事関連費との区別が困難、所得隠しを防ぐなどを理由として、農業や漁業を含む自営業者のみ世帯課税が正当化されてきました。所得隠しは、いわゆる青色でも法人でも、やろうと思えばできてしまいます。70年以上たった今、簡単な会計の基本知識は普及し、パソコンやスマホなどの普及もあり、個人事業主も9割近くが家計と事業収支を分け記帳しています(全婦協アンケート)。平成26年1月からは、法律で全ての事業者に記帳が義務付けられ、白色青色の申告の仕方で差をつける根拠は全く無くなりました。また、法律に依る申告の基本は白色で、青色での家族への給与支払は、あくまでも税務署長の許可の下の特典です。労働対価を得る基本的人権を、特典で認否すること自体が、差別であり憲法上問題です。
 法律条文が制定された当時と社会状況も犬きく変化し、女性の労働分野への進出もめざましく、夫婦間や女性自身の労働への意識も大きく変化していますが、日本の経済ジェンダー・ギャップ指数は146か国中121位と、男女の差が世界でも際立ったものになっています。56条は家族従業者の男女を規定していませんが、社会的慣習もあり、75年近くたった今も家族従業者の8割が女性です(財務省調査)。
 日本弁護士連合会は、所得の様々なデータを基に事業専従者の実態を分析し、税制度の問題点を具体的に提起し、「女性の家族従業者としての労働の価値を正当に評価するため、56条及び同57条の見直しを求める(要旨)」との意見を表明しています。
 また、2016年には国連の女性差別撤廃委員から、「所得税法が、家族従業者の所得を必要経費と認めていないことが女性の経済的自立を事実上妨げており、家族経営における女性の経済的エンパワーメント促進のために、所得税法の見直しを検討することを求める(要旨)」と日本政府に勧告が出されました。家族従業者の給与等を経費として扱わない法制度は日本独自のもので、多くの主要国では、家族従業者の人格・人権・労働を正当に評価し、その働き分を必要経費に認めています。
 また、春日部市男女共同参画推進条例では、条例の目的を「基本理念に定めた男女共同参画社会を、市、市民、事業者が、責務をもって総合的計画的に推進する。(要旨)」とし、基本理念については「人類の普遍的価値の人権が尊重され、男女の固定的な役割分担を見直し積極的に差別をなくし、制度や慣行が男女の活動に影響の無いよう配慮する。(要旨)」としています。この条例によっても、家父長制度の差別的な因習による56条は廃止されるべきです。
 埼玉県市町村税務協議会は「56条に規定された支払いが、労務の対価か家計的なものか不明瞭で、時代に即していないことから見直しを行っていただきたい(要旨)」との要望を令和3年4年と連続して国に出しています。
 56条廃止の意見書を国会に上げた自治体は令和5年1月13日現在で566自治体にのぼり、地方経済衰退の一因に56条を上げた自治体の意見書もあります。平成26年6月には従業員5人以下を対象とした「小規模企業振興基本法」が制定され、国とすべての自治体に小規模企業への支援が責務として明確化されました。後継者を育成し地域の疲弊した経済を立て直す意味からも56条の廃止が求められています。
 政府は56条廃止に向けた見直し検討を答弁してから14年たちますが、いまだに実現していません。家族従業者が「法の下の平等」により、一人の人間として人格、人権が尊重されるよう所得税法第56条を早急に廃止するよう国に働きかけてください。
 
 地方自治法第124条の規定により、上記のとおり請願書を提出します
  
  令和5年5月19日

 春日部市議会議長  鬼 丸 裕 史 様

会議録

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