離婚後の「共同親権」を導入する民法改正案は、親子関係と家族の在り方に関する戦後民法の根本に関わる改正です。「こどもの最善の利益」が法律の第一の目的と政府は述べていますが、審議の中で子の利益を害する新たな問題も明らかになっています。
改正案に、離婚時に共同親権か単独親権か両親が合意できないときは裁判所が判断する(非合意型共同親権)が盛り込まれましたが、合意のない父母が親権者になればこどもは父母の葛藤にさらされ続けます。DVやモラハラが原因で離婚した場合も共同親権を求められ訴訟を起こされるリスク、虐待のある場合、医療や学校現場に混乱が生じる可能性など、当事者の声が置き去りになり国民的合意には至っていません。
また共同親権となっても、「監護及び教育に関する日常の行為」「DVや虐待など急迫の事情」がある時は同居親が単独で決められるとしていますが、日常の行為や急迫の事情とは何なのかが明らかにされていません。
さらに、高校の授業料を無償化する高等学校等就学支援金制度は、共同親権の場合、同居親と別居親の収入が合算されることにより、支援金を受け取れないこどもが出てくるおそれがあることが明らかになりました。「こどもの最善の利益」の確保と言いながら、こどもの権利がないがしろにされています。児童扶養手当、障害児福祉手当など、親の所得が要件となっている各省庁のこども支援策は32件あり、まともな検討がないために多くの人に不安が広がっています。改正の出発点は経済的に困窮するひとり親家庭への支援でしたが、養育費の不払い解消のため求められていた国による立て替え払いは盛り込まれませんでした。日本乳幼児精神保健学会は、こどもにとって最も重要なのは、養育者との安定した関係だとして、科学的に事実が礎とされていない離婚後「共同親権」導入によるリスクに警鐘を鳴らす声明を出しました。
よって、文字どおり、「こどもの最善の利益」が保障され、ジェンダー平等や生き方の多様性が尊重される民法改正を求め、共同親権は削除することを求め、強く要望します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年6月17日
春 日 部 市 議 会
衆議院議長 様
参議院議長 様
内閣総理大臣 様
内閣府特命担当大臣(こども政策)様
厚生労働大臣 様
総務大臣 様
法務大臣 様