各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書
視察報告書
- 委員会名・会派名
- 総務委員会
- 視察先
- 宮城県 仙台市
- 視察案件
- 市民協働事業について(若者が活躍するまちづくり)
- 実施日
- 令和7年10月29日
- 参加者氏名
- 山口 剛一、藤原 智子、酒谷 和秀、大野 とし子、阿部 雅一、山崎 進、荒木 洋美
視察結果概要
(1)視察先の概要
仙台市は、東北地方のほぼ中央に位置し、市域の西は奥羽山脈、東は太平洋に囲まれ、人口は約110万人、面積は786.35㎢です。北西部には、蔵王国定公園や県立自然公園である船形連邦があり、千m級の山が連なっていることで、森林が市域面積の約6割を占めています。その山地の東には広い丘陵地が続き、合間を縫うように広瀬川、名取川、七北田川が東流し、太平洋に注いでいます。仙台は、それらの河川により形成された河岸台地や段丘の上に発達した都市です。
1600年、伊達政宗は領内の中枢と交通の要衝であると同時に広遠な平野を控えて大きく発展する可能性を備えた仙台に居城を定めました。以来、仙台は全国有数の城下町として栄えてきました。
明治22年に市制が施行され、軍事・司法・運輸・通信等の国家機関や、東北帝国大学などの教育機関の存在により「東北の治府」、「学都」と評されました。戦後、戦災復興事業や都市計画事業により都市整備が進み、経済復興と共に国家機関が集中し、また、昭和40年代に入ると経済の高度成長による市場の拡大に伴い企業の支店進出が相次ぎ、中枢管理機能が著しく高まりました。平成元年4月に全国11番目の政令指定都市に移行し、東北の中枢都市として発展を続けています。
(2)視察内容
○事業開始の経緯
平成11年に「市民協働元年」を宣言し、「市民公益活動の促進に関する条例」を制定しました。また、同年、「市民活動サポートセンター」を開館しました。その後、多様な主体の協働によるまちづくりの高まりに伴い、平成27年7月に「協働によるまちづくりの推進に関する条例」を施行しました。その後、条例に基づき「協働によるまちづくりの推進のための基本方針」を策定しました。また、基本方針において方向性を示している基本的な施策(3分野13項目)を推進するための主な事業を掲載した「協働まちづくり推進プラン(現在の計画期間は令和3〜7年度)」を策定しました。
若者施策に取り組む狙いは、仙台市は学都・支店経済都市(様々な人材が転入する)であり、多くの若者が存在しており、その強みをもっと生かせる可能性があるため、「若者のアイデアの市政への取り込み」「将来のまちづくりの担い手の発掘・育成」「若者の社会参加の促進」によって、若者の活力でさらに発展し、それが持続するまちとなることです。しかし、まちづくり活動へ「興味・関心がある若者」は、全体の77.3%でしたが、「興味・関心があるが、活動経験がない若者」が全体の56.2%をしめており、実際の活動までには至っていませんでした。
そこで、「まちづくりに興味を持つに至っていない若者」をターゲットにした「若者目線によるまちづくり情報の発信」を、「まちづくりに興味はあるが行動に移せていない若者」をターゲットにした「仙台まちづくり若者ラボ」を、「まちづくりに活躍する若者」をターゲットにした「ユースチャレンジ!コラボプロジェクト」「仙台若者アワード」を実施することにより、「潜在層、関心層の若者」から「活動層の若者」までをトータルで後押ししています。
○各事業の概要、課題、今後の展望
◇「若者目線によるまちづくり情報の発信」
まだまちづくりに興味を持っていない若者をターゲットに、民間Webサイトで仙台市の若者施策や若者団体の活動等を発信する事業です。学生チームが若者目線で取材や記事作成、発信を行っています。
課題は、記事を読んだ若者を実際のまちづくり活動への参加につなげる工夫や、より多くの記事の閲覧につながる広報・周知とのことでした。
また、今後の展望は、記事の発信に加え、新たな若者がまちづくり活動を行っている様子を動画として発信することや、市のSNSと連動しながら記事を拡散し、より多くの記事閲覧につなげるとのことでした。
◇「仙台まちづくり若者ラボ」
まちづくりに興味はあるものの行動に移せていない若者を対象に、ワークショップやフィールドを通じて、まちづくりを体験できるプログラムを実施し、若者の発掘・育成を目指す事業です。若者(学生・社会人等)が6チームに分かれ、「子育てが楽しいまち仙台」「観光交流が盛んな仙台」「防災でつながる仙台」といったテーマごとに、まちづくりのアクションを実施します。なお、各チームに、若者の活動を伴走支援する若手社会人のメンター(チームの指導・相談役)と、各テーマに関連する業務を担当する部署の市職員をアドバイザーとして1人ずつ配置しています。
課題は、参加に当たって一定のハードルがあることや、参加した後に継続して参加できる活動があるとよいとのことでした。
また、今後の展望は、アクション報告会での発表を、本事業参加者以外の人にも広く見てもらえるよう、実施会場の変更や周知の強化を行うとともに、若者の目に触れるような媒体を活用し、大学とも連携しながら幅広く参加者を募っていくとのことでした。
◇「ユースチャレンジ!コラボプロジェクト」
若者団体から身近なまちづくりに取り組む事業の提案を募集し、審査の上、採択された事業について、市が負担金(最大30万円)を交付するとともに、若者団体と協働で取り組む制度です。若者団体には、サポート団体が必要なサポートを行っています。事業提案は、提案内容を団体が設定する「自由設定型」と、市の部署がテーマを設定する「テーマ設定型」で募集しています。
課題は、事業の協働担当課によっては協働に対する温度差があることや、他の若者へ広く周知する機会が少ないとのことでした。
また、今後の展望は、若者団体から事前相談があった段階で、庁内で協働が想定される課への事業の概要説明と提案内容の共有を行うなど、早期に協力体制の構築を行うこと、また、事業の成果報告会を公開形式で実施し、広く活動を紹介するとともに、今後多くのまちづくりの主体に発信できるような機会を創出していくとのことでした。
◇「仙台若者アワード」
宮城県内で社会活動の解決に向けて活動する若者団体を表彰する取り組みです。最終審査プレゼンテーションによる若者団体の発表のほか、団体同士の交流に機会を設けています。仙台市、コカコーラボトラーズジャパン、一般社団法人ワカツクの3者で実行委員会を組織して運営しています。
課題は、例年10団体程度の参加に留まっており広がりにかけることや、若者団体の交流が、事業参加団体同士のものに留まっており参加団体以外の若者等との関わりが少ないとのことでした。
また、今後の展望は、審査員からのフィードバックが受けられる点や団体同士の交流ができる点などの参加者メリットをPRすることや、最終審査プレゼンテーションについて、参加団体以外の若者も気軽に見ることができるよう実施会場を変更するとのことでした。
(3)視察から得られた考察
今回の仙台市への行政視察、特に「協働によるまちづくりの推進」と、その中でも「若者施策」に焦点を当てた取り組みは、本市の今後のまちづくりを考える上で多くの示唆に富んでいます。
1.段階に応じた多角的な若者支援策の有効性
仙台市が実施している「若者目線によるまちづくり情報の発信」「仙台まちづくり若者ラボ」「ユースチャレンジ!コラボプロジェクト」「仙台若者アワード」の4つの事業は、「潜在層」「関心層」「活動層」という若者の活動への関与度に応じて、明確なターゲット設定と支援内容が分けられています。
・潜在層、関心層へのアプローチ
「情報発信」や「ラボ」といった、まずはまちづくりを「知る」「体験する」機会を提供することで、活動への心理的ハードルを下げ、行動変容を促す仕組みは非常に有効です。特に本市のような都市においても、興味はあるものの最初の一歩を踏み出せない若者の掘り起こしに繋がる可能性があります。
・活動層への支援
「コラボプロジェクト」による財政支援と市職員との協働、そして「アワード」による表彰と交流の機会は、若者団体の持続的な活動を後押しし、主体性を尊重する姿勢を示しています。これは、若者がまちづくりの担い手として定着するために不可欠な要素です。
2.「協働」の質の向上と庁内連携の重要性
「ユースチャレンジ!コラボプロジェクト」の課題として挙げられていた、「協働担当課による協働に対する温度差」は、市民協働を推進する上での共通の課題と考えられます。
・解決に向けた施策の示唆
仙台市が今後の展望としている、「事前相談段階での庁内への概要説明と情報共有」「早期の協力体制構築」は、協働の成果を最大化するために、行政側が部署間の壁を越えて一貫したコミットメントを示すことの重要性を示しています。本市でも、市民協働事業を実施する際の庁内マニュアル整備や、職員研修による意識統一が求められます。
3.持続可能な担い手育成と交流促進の必要性
各事業の課題として、活動への継続的な参加や、参加団体以外の若者との関わりの少なさが挙げられていました。
・「ラボ」からのステップアップ
「仙台まちづくり若者ラボ」に参加した若者が、その後も継続して関われる「受け皿」となる活動や団体の紹介・連携を強化することが、一時的な体験に終わらせない鍵となります。
・交流機会の拡大
「アワード」や「コラボプロジェクト」の成果報告会を公開形式で実施し、参加団体以外の若者や市民が気軽に活動に触れる機会を増やすことは、活動の認知度向上と、新たな担い手発掘の相乗効果を生み出します。
4.本市への応用可能性
本市が「若者の活力」をまちづくりに活かすためには、仙台市の成功事例を参考にしつつ、以下の点を具体的に検討すべきです。
・若者向けプラットフォームの強化
仙台市のように、市の情報発信だけでなく、若者の視点を取り入れたSNSやWebサイトを通じた情報発信を強化し、潜在的な関心層へのリーチを拡大すること。
・伴走支援の仕組みの導入
「仙台まちづくり若者ラボ」で効果を上げている、若手社会人メンターや市職員アドバイザーによる「伴走支援」の仕組みは、本市でも若者のアイデアを行政との連携を通じて実現に導く上で非常に有効です。
若者の力を最大限に引き出し、持続可能なまちづくりを実現するためには、行政が「場」と「仕組み」を提供し、その活動を積極的に後押しすることが重要であると改めて認識できました。
この考察に基づき、本市で具体的に導入を検討すべき施策について、さらに議論を進めてはいかがでしょうか。

視察の様子