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各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
総務委員会
視察先
宮城県 多賀城市
視察案件
震災体験・記録伝承事業及び防災DXについて
実施日
令和7年10月28日
参加者氏名
山口 剛一、藤原 智子、酒谷 和秀、大野 とし子、阿部 雅一、山崎 進、荒木 洋美

視察結果概要

(1)視察先の概要
 多賀城市は、宮城県のほぼ中央、太平洋岸に位置し、人口は約6万人、面積は19.69㎢です。まちの地形は、東西に長く、それを2つに分けるように砂押川が中心部を流れています。市の東部や北部には史跡が点在し、海に近い南部の平野には工場地帯が形成され、西部地区の平野には田畑が広がっています。
 明治22年、13の村の統合により、村名を多賀城にしました。昭和17年、市内に海軍工廠(しょう)が設置され、多くの人が転入し急激に都市化が進みました。昭和26年には、町制を施行。昭和35年には完全な工場地帯を形成するに至ります。昭和46年の仙台港開港に伴い、港と結びついた鉄鋼、石油、電力等を中心とした企業が進出し、宅地開発が盛んになり、昭和46年には、3万人市制の特例を受け、宮城県下9番目の市となりました。
 また、平成23年3月の東北地方太平洋沖地震による津波で多大な被害を受けました。

(2)視察内容
○東日本大震災による被害の状況
 多賀城市における最大震度は5強でした。津波高は仙台港で約7m、市内では約2m〜4.6mであり、浸水面積は市域の約33%に当たる約6.62㎢でした。津波は市の中心を流れる河川下流から上流へ遡上し、臨海部の港湾や工業地帯、高密度な市街地を広域的に襲い、甚大な被害を及ぼしました。約8,500台の自動車が市街地に流入し、がれきの推計量は35.3万トン、壊れた家の数は1万1,000棟以上、市内死者数は188人(市民97人、市民以外91人)で、避難者数は最大で約1万2,000人でした。

○減災都市戦略
 現地再建を基本に、10年間で震災からの復旧・復興を目指すこととし、被害の最小限化「減災」を目指し、平成25年11月には「減災都市宣言」をしました。多賀城市減災都市戦略では、「災害に強い都市形成」「自助・共助の減災力向上」「被災経験の伝承」「減災技術の集積・創出」の4つの体系の下、8つの戦略を定めています。
 「災害に強い都市形成」では、「戦略1、津波対策・多重防御戦略」として、防潮堤等の津波防御施設や避難道路の整備、避難ビルの確保、防災行政無線等の整備を行いました。また、「戦略2、地震に強いまちづくり戦略」として、道路・橋りょう等の耐震整備、木造建築物の耐震化促進を行いました。また、「戦略3、雨水浸水被害軽減戦略」として、雨水幹線や側溝の整備、雨水ポンプ場の整備・増設を行いました。また、「戦略4、災害体制確立戦略」として、避難所運営マニュアルの策定、避難所防災備蓄施設や支援物資物流拠点等の整備を行いました。
 「自助・共助の減災力向上」では、「戦略5、自動力強化事業」として、防災・減災講座の実施、防災手帳の作成・配布、津波ハザードマップの作成を行いました。また、「戦略6、地域防災力・減災力向上戦略」として、地域防災訓練の実施、自主防災組織の活動支援を行いました。
 「被災経験の伝承」では、「戦略7、震災体験伝承戦略」として、被災経験、記録等を伝承し、次の災害に備えるため「たがじょう見聞憶」を作成しました。
 「減災技術の集積・創出」では、「戦略8、減災リサーチパーク構想戦略」として、復興特区法による課税の特例、減災研究拠点の形成などを行いました。

○防災のDX化
◇防災情報アプリ「多賀城防災」の整備
 災害情報伝達手段として、防災アプリ「多賀城防災」を作成しました。アプリには、気象・地震・津波等に関する情報配信、防災行政無線の音声再生、風水害時の警戒レベル表示、防災ハザードマップ、防災お役立ちリンク集などの機能があります。
◇災害用防災備蓄のDX化
 災害用備蓄品管理・要請システムを導入し、アナログだった備蓄品管理をデジタル化し、業務効率アップと適切な在庫管理を可能にしました。特徴は次のとおりです。
・市が保有している備蓄品をシステムで一元管理
・保管場所、消費期限、品目などで分類可能
・備蓄品の画像もシステムから閲覧可能
・PCだけでなくモバイルでも操作可能
・災害時は各避難所での備蓄品の消費状況がリアルタイムに把握可能
・協定先企業等への支援物資要請もシステムから依頼可能
◇防災行政無線の更新と河川監視カメラの設置
 震災後に整備した防災行政無線を更新し、市内55か所に設置しました。スピーカーの種類を、これまでのトランペット型から高性能なスリムスピーカーに変更し、より聞き取りやすくなりました。また、防災アプリ等と連携し、防災無線で放送した内容が、アプリにも即時配信可能となっています。
 また、河川監視カメラを整備し、河川の水位を監視できるようにしました。
◇IP無線機の整備
 災害時の職員間の情報共有のため、携帯電話のLTE回線を使用し、全国どこでも使用できる無線機を整備しました。音声通信に加え、リアルタイムな映像配信も可能であり、災害現場の状況を対策本部で共有が可能です。また、災害現場で撮影した写真を地図上に表示することで、「どこで」「何が起きているのか」を把握することが可能です。
◇防災ビジョンの設置
 津波避難道路上に、縦3m×横4mのLEDビジョンを2基設置しました。災害時は、防災アプリ等と連動し、避難情報等をリアルタイムに配信します。また、平常時は、市政情報やPR映像等を配信しています。
(3)視察から得られた考察
 今回の多賀城市への行政視察では、東日本大震災の甚大な被害と、それらを乗り越えて策定・実行されている「減災都市戦略」および「防災のDX化」について深く学ぶことができました。
1.減災戦略の多重性と包括性
多賀城市が掲げる「減災都市戦略」は、「災害に強い都市形成」「自助・共助の減災力向上」「被災経験の伝承」「減災技術の集積・創出」という4つの体系と8つの戦略に基づき、ハード・ソフト両面から包括的に災害対策を推進している点が特筆されます。
・多重防御の重要性(戦略1)
防潮堤、避難道路、避難ビル、防災行政無線といった複数の手段を組み合わせることで、1つの対策が機能しなくても被害を最小限に抑える「多重防御」の思想は、本市が抱える水害リスク(雨水浸水被害)への対策を考える上で非常に参考になります。本市においても、治水対策に加え、避難経路の確保や避難所の機能強化を多層的に進めるべきです。
・自助・共助の強化(戦略5・6)
防災手帳の作成や地域防災訓練の実施、自主防災組織への支援を通じた市民の「自助・共助」の減災力向上は、行政の取り組みを最大限に活かすための土台となります。市民一人ひとりの防災意識を高めるための教育・啓発活動の強化は、本市においても喫緊の課題です。

2.DX技術を活用した実践的な防災体制の構築
 多賀城市が積極的に進める「防災のDX化」は、災害時の情報伝達と対策本部の機能強化に非常に重要なものです。
・リアルタイムな情報共有
防災情報アプリ「多賀城防災」や、防災行政無線との連携、さらにはIP無線機によるリアルタイムな映像配信と地図上への情報表示は、災害発生時における「どこで」「何が起きているか」の迅速かつ正確な把握を可能にし、初動対応の質を飛躍的に高める鍵となります。これは、災害対応における情報空白を埋める上で、本市が導入を検討すべき極めて有効な手段です。
・備蓄管理の効率化
災害用防災備蓄品の管理・要請システムの導入による備蓄品のデジタル一元管理は、平時における在庫管理の適正化だけでなく、災害時の避難所ごとの消費状況のリアルタイム把握や、協定先企業等への支援物資要請を円滑化し、物資支援の業務効率と適切な配分に大きく貢献しています。
・視覚による情報伝達
大型防災ビジョンの設置は、避難情報などを瞬時に、かつ多くの市民に対して視覚的に伝える上で有効であり、平常時の市政PRとの兼ね合いも実現している点から、公共施設の有効活用の好事例として学びがあります。

3.被災経験の伝承と研究(戦略7・8)
 「たがじょう見聞憶」の作成を通じた震災体験の伝承は、教訓を風化させず、次の世代、次の災害に備えるという、行政の重要な責務を示しています。また、「減災リサーチパーク構想」は、減災を都市の成長戦略と位置づけ、行政と研究機関が連携して技術を集積・創出する先進的な試みであり、防災を単なるコストではなく未来への投資と捉える姿勢は、非常に示唆に富んでいます。

4.今後の本市への提言
 今回の視察で得られた知見を基に、本市においては、以下の視点から施策の具体化を推進すべきと考えます。
@防災DXの導入検討
防災情報アプリの整備やIP無線機の導入による災害時情報共有体制の抜本的強化を最優先で検討する。
A備蓄管理のデジタル化
災害用備蓄品のデジタル管理システムを導入し、効率的かつ適正な物資支援体制を確立する。
B水害対策への多重防御の適用
既存の治水対策に加え、避難経路確保、避難所機能強化、市民への啓発活動を一体的に進め、水害に対する多重防御体制を構築する。

 これらの取り組みは、市民の安全・安心を確保し、「災害に強く、しなやかな春日部市」を実現するための重要な一歩となります。

視察の様子
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