各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書
視察報告書
- 委員会名・会派名
- 新政の会
- 視察先
- 北海道 釧路市
- 視察案件
- 「中期財政計画・中期財政見通し」について
- 実施日
- 令和7年7月18日
- 参加者氏名
- 山崎 進、鬼丸 裕史、水沼 日出夫、石川 友和、山口 剛一、永田 飛鳳、会田 吉幸
視察結果概要
(1)視察先の概要
釧路市は、平成17年10月11日に釧路市、阿寒町、音別町が合併して、新生「釧路市」が誕生しました。
人口は、152,886人(令和7年4月末現在の住民基本台帳)で道内では6番目に多く、約1,363㎢の面積は道内で3番目に広い市になります。
釧路市は北海道の東部に位置し、南は太平洋の海原に面し、北は日本百名山に指定されている阿寒岳に至り、阿寒摩周国立公園と釧路湿原国立公園の二つの国立公園を擁する自然豊かな地域です。気候は、沿岸部では一年を通して冷涼で、7月から9月の最高気温の平均が約28度であることから、夏には長期滞在地として選ばれています。また、主に6月から8月にかけて霧が発生することもありますが、秋から冬にかけて晴天の日が多く、年間の日照時間は札幌よりも多くあります。(令和6年、気象庁データ)
釧路市の経済は、農業、林業、水産業の第一次産業とそれに関連する食品加工業、製紙、石炭鉱業そして観光業を柱として発展し、物流を支える「港」「空港」「鉄道」「道路」が整備されてきました。そして「高速道路網」が釧路に延伸されたことで、物流、観光の伸展がもたらす波及効果に期待が寄せられております。
釧路市の行政においては現在、「都市経営」の視点による新たなまちづくりの指針として「釧路市まちづくり基本構想」を策定し、「経済活性化」を主軸に、地域経済を担う主役となる「人材育成」と経済活動を展開する舞台となる「都市機能向上」を重点戦略と定め、目指すべきまちづくりを実現するための取り組みを進めています。
(2)視察内容
釧路市における「釧路市財政健全化推進プラン」を実施するに至った背景、現状及びプランの内容、市民への説明方法などを調査目的としています。
(3)視察から得られた考察
日本の社会情勢は、少子高齢化や人口減少に加え、近年では「物価高騰」「人材不足」「デジタル技術の進展」などにより急激に変化しており、行政サービスにおいても大きな転換が必要となってきています。特に「物価高騰」や「人材不足」により、社会全体で物の値段や人件費が高騰しており、釧路市の市政運営にも大きな影響を与えています。
釧路市においては、歳出(支出)が増える一方で、歳入(収入)の増が小さいことから、将来的に行政サービスの維持が困難となることが想定されます。
そのため、様々な見直しを進めることで、社会情勢の変化に対応した市政運営に転換し、行政サービスの水準を将来的に受け継ぐ必要があります。
また決算収支が悪化した要因として、歳出面では、子育て関連事業や高齢者福祉事業などのサービスの充実による支出の増加、物価や人件費の上昇に伴う、施設管理費や各種委託料、工事請負費、職員費の増加などが要因であり、歳入面では市税や交付税などの歳入が歳出の増加と比べて小さいこと、施設管理費が増加しているが、施設使用料は据え置いていることなどが要因となっておりました。
このまま収支悪化が拡大すると、市政運営が成り立たなくなるため、事務事業の見直しに着手する必要が生じました。
今後の財政収支試算においては、令和7年度見込でマイナス28億円、令和8年度見込でマイナス26億円、令和9年度見込でマイナス24億円、令和10年度見込でマイナス36億円、令和11年度見込でマイナス46億円と見込まれ、このマイナスは基金(貯金)で穴埋めしなければならず、このままでは現在、釧路市に119億円ある基金(貯金)も令和11年には底をつき、赤字決算となってしまい、その後も収支悪化が継続すると、「財政再建団体」となる恐れがあります。
日本経済は、世界同時不況の影響による最悪期からの回復の兆しが見えるとはいえ、昨今の急激な円高の進行などにより、輸出関連産業を中心に予断を許さない状況が続いています。また、釧路市においては、製造業や個人消費の落ち込みが大きく、景気や雇用の回復が他地域に比べて遅れているのが現状です。一方、平成15年以降の、いわゆる「三位一体改革」によって地方財政を取り巻く環境が大きく変化し、国庫補助負担金の廃止・縮減や税財源の移譲、地方交付税の見直しなどが行われたところです。釧路市にとっては、景気の低迷により市税等の一般財源が大幅に減少する中で、特に地方交付税の総額の抑制による影響が極めて大きく、扶助費などの義務的経費の伸びに交付税の伸びが連動していなかったことなどから、厳しい財政運営を強いられている状況にあります。
それに加え、市の第三セクターである釧路市土地開発公社と葛路振興公社は、地価の下落や土地の長期保有により、土地取得時の金融機関からの借入金の金利増などの影響を受けて、経営が厳しい状態となったため、国の「第三セクター等改革推進債」を活用し、両公社を解散・清算しておりました。その第三セクターの処理費用として146億円かかり、経常的な収支不足119億円と合わせて256億円を16年間で解消する必要が生じました。
このような状況を改善するために、@内部管理事務や業務の見直し・廃止、A事業の見直し・廃止、B公共施設の見直し・廃止、C歳入(自主財源)の確保の4項目について検討を行っておりました。
事務事業の見直しとして赤字を回避するためには、釧路市において令和9年度までに最低限16億円(一般財源ベース)の見直しが必要であるため、令和8年度予算にて8億円、令和9年度予算にてさらに8億円の合計16億円の見直しを目標としておりました。この目標が達成されていけば、基金を活用しつつ、事務事業の見直しに取り組むことで、令和11年決算においても赤字を回避できるという試算結果でした。
春日部市においては毎年度膨れ上がる予算編成で本当にこの先、本当に大丈夫なのか、赤字決算にならないよう、数年先の財政状況を予想する中期財政見通し(予測)を作成し、市の財政状況、将来負担率等を見える形にし、見直しが必要なものはしっかりと早期に市民に説明し、理解を得ていく必要性を強く感じました。

視察の様子