各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書
視察報告書
- 委員会名・会派名
- 新政の会
- 視察先
- 北海道 網走市
- 視察案件
- 地域資源を活かしたインバウンド対応、案内サロン整備、体験型観光のプロデュース事例について
- 実施日
- 令和7年7月17日
- 参加者氏名
- 山崎 進、鬼丸 裕史、水沼 日出夫、石川 友和、山口 剛一、永田 飛鳳、会田 吉幸
視察結果概要
(1)視察先の概要
網走市は、東経144度16分、北緯44度01分にあり、北海道東部に位置し、東は小清水町、西は北見市に隣接しています。
網走市の行政面積は、東西に33.2q、南北に37.7q、周囲151.1q、471㎢です。網走市の人口は31,746人(2025年6月30日現在)です。
地勢はおおむね南方に高く、藻琴山を経て阿寒の雄峰を望み、西は網走湖・能取湖を経て北見盆地に連なり、東は斜里平野の奥に知床連山の雄峰を望むことができます。
また、網走は水辺空間が多く、代表的な網走川は流程115qでその源を阿寒群峰に発し、津別川・美幌川などと合流し網走湖を経て網走市街地を貫流してオホーツク海に注いでいます。その他にも網走市内には藻琴川・卯原内川・浦士別川など大小の河川及び能取湖・網走湖・藻琴湖・濤沸湖・リヤウシ湖の大小の湖沼が点在し、変化に富んだ自然環境を有しています。海流は主として対馬暖流が宗谷海峡から東流していますが、一部千島海流の流入もみられます。
網走市は、一年を通して晴天が多く、年間降水量・降雪量は少ない地域です。また、オホーツク海に面するため、寒暖差も少なく、積雪量についても寒気と海流の影響もあって陸部に比べると和らいでおり、比較的温暖な気候といえます。
なお、沿岸地帯では、冬季の特殊現象として毎年1月中旬より流氷が到来し、最盛期には沿岸を埋め尽くすほどの流氷がみられましたが、最近では、地球温暖化の影響もあり、流氷域面積の減少や流氷の観測期間の短縮などがみられます。
主要産業は、畑作と酪農を主体とする農業とオホーツク海及び湖沼を対象とする漁業、そしてこれらを原料とする農水産加工業とともに、観光業が柱となっています。
現在は、平成30年度に策定した「第6期網走市総合計画」に沿って、こども、高齢者、障がいのある方などを地域全体で支えるやさしいまちを目指した「一人ひとりを大切にするやさしいまち」、市民の命と暮らしを守る安全・安心を目指した「豊かな自然と共生する安心なまち」、にぎわいのある活力あふれるまちを目指した「ひとが集いにぎわいと活力を生むまち」、豊かな人間性を育むまちを目指した「豊かなひとを育むまち」、時代のニーズに適応した効率的・効果的な行政運営を目指した「ともに歩み、築く協働のまち」をキーワードに、市民と行政の協働によるまちづくりを進めています。
(2)視察内容
網走市の地域資源を活かしたインバウンド対応と集客戦略、案内サロン整備や体験型観光プログラムの造成と実施、地域住民との協働によるインバウンド受入態勢の構築を調査目的としています。
(3)視察から得られた考察
網走市は知床への通過点であったため、なかなか観光客数が増えませんでしたが、観光客が立ち寄り、網走市の自然を活かした体験型観光をワンストップで何かできないのかという視点から、課題解決に取り組みました。
まず問題点は、一次産業が盛んな地域でありながら、観光産業との結びつきが薄いため、地域の暮らしの価値や景観の魅力を、地域に暮らす自分たちが活用できていないという課題がありました。
この解決策として、地域の産業・景観・食で地域の価値を伝える旅を提案・実行する団体として、「オホーツク農山漁村活用体験ツーリズム推進協議会」(「一次産業×観光」という新しい旅の形の提案)を2018年に設立しました。
これは農業体験や郷土料理作り体験、工芸品作り体験、水産資源の水揚げ見学、郷土の歴史、文化体験、伝統的な食品加工場などの見学、飲食、飲食店での体験など多岐に渡る体験を可能としたものです。また、交流の拠点・情報発信の拠点・体験実施の拠点として2019年にはConnectripを網走国定公園内網走湖畔に開設し、観光が地域産業の付加価値を付けるという考えのもと、網走川流域の会との連携による水域でのカヤックの実施体制整備が行われました。地域産業を観光として見せていくには、産業従事者や関係者との意識醸成が必須であり、網走漁業協同組合、西網走漁業協同組合、さけ・ます増殖協会と何度も協議を重ね、協力体制の整備に至ったとのことです。
近年の取り組みとしては、市内小中学校総合学習への提案として、地域の価値をこどもたちに伝えるアイデンティティー教育、市内7校の地域学習・宿泊研修の受け入れも行っておりました。
また網走市へのアクセスは車で30分の距離にある女満別空港です。海外からのインバウンド客に対応するため、海外からの発着便数をもとに、海外観光客のターゲットを絞っているとのことでした。このことにより、空港を拠点とした網走市の自然を活かした体験型観光をワンストップ造成ツアー試験の実施も行われておりました。体験型アクティビティーであるカヤックのガイド人材は、専業のガイドではなく、地域の一次産業従事者が兼業で行っております。
また網走市内の飲食店にせっかく訪れていただいたのに、夕食時間に混み合い、何件も回ってお店に入れないということを解消するため、飲食店空席ナビの運用も行っておりました。
また網走旅アト消費アンケートにおいて、旅行後にふるさと納税で網走市の物産を購入してくれたかまで調査しているそうです。
地域の兼業ガイドの活躍ややりがい、網走市での体験料をふるさと納税で支払えるよう、現地決済ぺいふるを活用し、収益の地域還元につなげ、さらに地域で生産される特産品のイメージアップ等、地域産業への貢献へと新しい観光の形が地域に還元されるという好循環を目標としているとのことでした。
春日部市も東京都内と日光や会津などの観光地の通過地点に位置している街です。網走市とは自然環境などは大きく異なりますが、春日部市が通過点にならないよう、春日部市独自の観るだけではない観光の街として、市民と協働した観光の形を作っていくことが望まれます。

視察の様子