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各常任委員会、議会運営委員会、各会派 行政視察報告書

視察報告書

委員会名・会派名
次世代 かすかべ!
視察先
広島県 尾道市
視察案件
地域共生・重層的支援の取組について
実施日
令和7年7月8日
参加者氏名
小久保 博史、吉田 稔、伊藤 一洋、阿部 雅一

視察結果概要

(1)視察先の概要
 尾道市は広島県の東南部に位置し、瀬戸内海に点在する島々からなる南部、本州沿岸を中心とした中央部および内陸盆地からなる北部で構成されています。総面積は284.89㎢で、人口は121,759人(令和7年6月1日現在)。
 大林宣彦監督の「尾道三部作(時をかける少女、転校生、さびしんぼう)」のロケ地を中心に、人気の観光地となっています。

(2)視察内容
 従来の行政運営(コロナ禍以前)の中で、「高齢」「子育て」「自殺対策」「障害」「困窮」と各分野がそれぞれに対応をしていました。しかし、「雇用環境の変化」や「情報通信の急速な発展」、「核家族化や未婚・晩婚化」などの諸問題が散見し、無縁社会(生計維持が不安定な世帯の抱える「関係(性)の貧困」、複合的な課題に対する支援者間の「関係(性)の貧困」、ひきこもりなど既存の相談窓口が不明確な課題の表面化等)をコロナ禍が加速させました。
 そこで社会的孤立を解決するために、令和2年5月から「福祉まるごと相談(「ワンストップ」断らない相談窓口)」を設置しました。更に、令和3年1月〜令和6年3月の間、「地域共生包括化推進会議(「支援者支援」分野を超えた専門職ネットワーク)」を設置しました。そして、令和2年度から令和5年度の間に取り組んできた各支援を一つにまとめ、令和6年度から、より重層的支援に取り組めるように「おのまる会議」を設置し、地域での相談会や研修交流会を通して、地域住民と支援機関や行政との多分野の支援者(事業者)同士の顔の見える関係の構築に取り組んでいます。こられの取り組みを「おのみちスタイル」とし、現在も継続して重層的支援に取り組んでいます。
 その結果、今までは見過ごしていたであろう対象者について把握することができるようになりました。例として、3人世帯(70代の生活困窮者、50代のひきこもり、40代の知的障がい)の場合、従来は「世帯ではなく個人での支援」だったため、相談者以外の支援は問題が明るみになってからの対応でした。現在では「世帯全体」を支援対象と捉え、事務局が地域共生包括化推進会議をコーディネートし、全員の支援に対応することができるようになりました。
 今後は、「この通りにやればよい」というマニュアルは期待できないと考えているため、「つながり」でボトムアップ型の「ご当地モデル」を創造していくことを目指して取り組んでいます。

(3)視察から得られた考察
 現場からの声を丁寧に集約し、時間をかけて作り上げた尾道市独自の重層的支援の取り組みであると感じました。担当者からは「相談者自身は、「自分が〇〇かもしれない」と思っているが、相談する方は少ない」との話がありました。そのような方々を「おのみちスタイル」の重層的支援で確認しながら対応し、表面化されない対象者も事前に確認することができていると考えられます。相談件数について、R2:91件・R3:265件・R4:314件・R5:538件・R6:649件(見込)と、R6は更に増加していますが、これは重層的支援の取り組みの結果、表面化されていなかった相談者を掘り起こすことができた結果だと考察します。
 また、担当者の考え方として、「トップダウンや交付金目当てに『形だけ整えた』重層事業は本末転倒であり、『課題を知る』『支援現場の声』のボトムアップ型であるべきであり、コンサルに委託する地域福祉計画では『ご当地感』は生まれない。尾道では、準備期間(支援者同士の目線合わせ)に4年かかりました。関係機関と合意形成を図りながら、全員で作りあげる施策が必要です。」とありました。この担当者の方は、R2のスタートから継続して担当している職員であり、やはり、熱意のある職員の考え・行動を上司が汲み取り、その結果、行政と地域を動かした好事例でありますが、反面、行政という縦割り社会の中では、このような気持ちの職員が不在となると、対応が難しくなるのではないかと懸念します。
 春日部市においても重層的な支援は必須であると考えます。しかしながら、地域によって課題は様々なので、尾道市と全く同じ形とはならないと思います。春日部市の現状の課題を検討しつつ、早期の実現を検討してきたいと思います。

視察の様子
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